街を走っていると、ふと目に留まる店がある。
派手な店、変わった店、繁盛している店。
そのなかでも、妙に心を揺さぶる「匂いたつ店」ってのがある。
決して流行ってるわけでも目立ってるわけでもないが、どうも気になる。
そんな飯屋を探すのが楽しいんだ。
今回見つけたのは、高知市役知町にある『あじみ』
まず看板の色ね。紫。
そして暖簾の美しいうぐいす色
絶妙な色使い。そしておそらく住居だろう2階からの生活感あふれる洗濯物よ。
僕は一発で興味が湧いてしまった。
近くに行くとメニューが黒板に書いてある。
これは、食べたいしかないラインナップじゃないか。
気持ちを落ち着けて入店の準備。
最初が肝心だ。おのぼりさんのようにキョロキョロしちゃ舐められちまう。
常連の顔していかねば。
ガラガラガラ
「ちゃーす」
いかにも常連のおっちゃんという感じであいさつ。
どこに座っていいか分からずに、ヘラヘラしながら厨房に近い席に腰かける。
おばちゃんがお茶を持ってくる。
僕は「カツ丼」をオーダー。
その店の実力を測るには、カツ丼が一番と言われている。(言われてない)
注文を終え、店内を見回す。
日本トップクラスに昭和だ。
のんびりといい時間が流れてくる。
そういえば何で「ちゃーす」なんて言ってしまったんだろう。
今になってめちゃ恥ずかしくなってきた。
赤面する僕にカツ丼が届く。
大衆的でありオーセンティックなカツ丼。
トロトロの卵が魅力的な照りを生んでいる。
いただこう。
うむ。美味いな。
いや、かなり美味いな。
先日の『たこ焼きハウス逢坂』のカツ丼が甘系カツ丼だとしたら、
ここ『あじみ』のカツ丼はまさに「出汁系」。
甘さが控えめな分しっかりと効いた出汁がカツ丼のレベルをアップさせる。
カツは薄めながらしっかりカラっと揚がっており出汁の効いた煮汁にドンピシャ。
相当レベル高い味だ。
なんというか、味にビシッと筋が通っているというか、多分何作っても上手に作れるんだろうなという味。
僕がカツ丼に舌鼓を打っていると、厨房から
「ちょっと今日は暑い。エアコン効きゆう?」
大将らしき人が厨房から店内のおばちゃんに声をかける。
おばちゃんは笑いながら。
「エアコンの効いてる厨房なんてないろ普通?そんくらい我慢しいや」
いやおばちゃん厳しいな。
大将も負けじと
「こんだけ暑かったら倒れるき、そろそろエアコンつけないかん。」
またもおばちゃんは笑って
「どっこの料理人も暑い中頑張りゆうがで。あんたも我慢しいや」
大将は
「はーはいはい」
と言って奥に引っ込んでいった。
おばちゃんは
「あとで冷たいお茶いれるきここで飲んだらえいわえ。」
と最後に少し優しい声をかけた。
厨房の様子は見えないが、大将はまんざらでもない顔してるに違いない。
なんていいやり取りだ。
味も雰囲気も素晴らしい。
また、隣の人が食べてたオムライスもぶっちぎりに美味しそうだった。
アジフライも気になるし、それに夜もやってるみたいだから一杯ひっかけたろか。
いい店見つけたな。