第64代横綱の曙が昨日お亡くなりになった。
54歳という早すぎるお別れだ。
世の人がこのニュースにどんな感想を抱いてるのかは分からないが、僕にとっては結構ショックなニュースだった。
僕は相撲が好きである。
祖母も父も相撲好きだったので、僕も小さい頃からテレビで相撲を見ることは当たり前だった。
小さい頃は、若貴人気から大相撲への注目は高く、民放でも頻繁に取り上げられていた。
そんななか、僕が初めて好きになった力士が曙だった。
小学1年生のときに、初めて大相撲の巡業を見に行った。
僕はその時の記憶はそんなに鮮明ではないが、若貴ブームの絶頂といっていい時期の巡業ということもあり、ものすごい観客数だったそうだ。
若乃花、貴乃花をはじめとした人気力士に大声援が飛ぶなか、急に僕が大きな声で
「曙ーーーーーー!!」
と叫んだらしい。
初めての巡業で初めて大声で叫ぶ言葉が「曙」だったことに父は心底驚き、大声を出す我が子を見ながら、
「こいつは変な子かもしれない」
と思ったそうだ。
僕にも曙にも失礼な話であるが、若貴ブーム真っただ中の当時、曙はヒール的な扱いを受けていたらしい。
2mを超える体で、破壊力抜群の突き押しを繰り出し相手を圧倒してしまう。
人気者の若貴を土俵下に吹き飛ばす姿はヒールに仕立てやすかったのだろう。
外国人力士初の横綱というところもその流れに拍車をかけたはずだ。
しかし、曙自身はとても謙虚で礼儀正しく、紳士的で優しい男だったと知られている。
辛口で知られる元横綱審議委員会の内館牧子さんも、「いつも私が曙の悪口を言っているのが恥ずかしくなるほど礼儀正しい人」と評しているほどだ。
幼い頃の僕が曙のこのようなエピソードなど知るはずはない。
自分でもなぜ曙が好きだったのかは分からない。
だが、曙の圧倒的な強さは覚えている。
あの問答無用の強さに僕は惹かれていたのかもしれない。
小学生の頃の文集に書いていた。
好きな横綱:曙
好きな芸能人でも好きなスポーツ選手でも好きな力士でもなく、好きな横綱である。
我ながら尖ったセンスをしている。
小学生が文集に『好きな横綱』という項目を作っている時点で変な子なのは確定で、父の推理は正しかったことが証明された。
しかし、「好きな横綱:曙」と書いてしまうほど僕は曙が好きだったのだ。
格闘家に転向した後の曙のイメージしか持っていない人は、是非とも『 横綱 曙 』の姿を見てほしい。
幼い僕を魅了した、本当に強い横綱の姿がそこにあるから。
『曙』という言葉には、夜明け、新しいことが始まるといった意味がある。
まさしく相撲界の新しい時代を作った曙さん、本当にお疲れ様でした。
ご冥福をお祈りします。