バナナ好きですか?
僕は好きではない。
違うな。
食べたくないが正解かな。
バナナジュースは大好きだし、味は全然好き。
でも食べたいと思わない。
もうかれこれ何年も自分で買ったことはない。
それがこの間、ふと思い立ち買ってみた。
スーパーで、この音楽が延々リピートされていたからだ。
いい加減にしろってくらい延々と垂れ流されている。
何て言ってるかもわからないし、いい曲とかでもないが妙に耳に残る。
僕はこの曲に操られるようにバナナをかごに入れた。
家に帰りバナナを手にとってみる。
食べようかとも思ったがやめておいた。
なんだかそんな気分にならなかった。
次の日も
その次の日も。
バナナを食べようとすると妙にソワソワして変な気分になる。
やっぱりまだダメだったか。
僕は小さい頃からずっと、とある競技をやってきた。
幼稚園の頃からやりはじめ、小学生にあがるとすぐに地元のクラブチームに入った。
そこそこ強かったこともあり、大会などでは毎回優勝を争うような選手だった。
そのため、毎回毎回プレッシャーに襲われ、試合前はホントにナーバスになっていたんだ。
そんな一番緊張する試合当日の朝、最も多く差し入れられるのが『バナナ』なのである。
やれエネルギーになる。
やれパワーが出る。
やれ美味しい(?)
とにかく選手の保護者たちがこぞって持ってくるのだ。
もっとこう、レモンをはちみつに漬けたやつとかあるだろ。
何で全員でバナナ持って来てんねん。
打合せとかして来いよ。
しかし、保護者たちの行為を無下には出来ない。
仕方なくもそもそとバナナを頬張るのだ。
試合前の一番緊張してるときにそんな何本もバナナなんて食べれるわけがない。
途中で気持ち悪くなる。最後には無理やりバナナを飲み込んで試合に臨むことに。
プレッシャーとバナナの気持ち悪さが相まって嘔吐してしまうこともあった。
そんなことを何年もしていたせいで、僕はバナナを口に含むと、自然と嗚咽してしまうようになっていた。
それから20年以上の月日が経ち、いまだにそのトラウマは消えてはなかった。
そろそろ食べれるかなと思ったけどまだ気持ちが乗らなかった。
僕は4本のバナナを職場に持っていき、近くの席の人に配った。
みんなに変な顔された。
心の中でみんな思ってるんだ。
「ゴリラがバナナ配ってるぞ(笑)」
奇しくもその日の午後に、出張帰りの後輩が『東京ばなな』を配っていた。
こいつまで僕をバカにするのか。
小学生の頃の僕よ。
そんなに無理にバナナを食べる必要なんてないぞ。
34歳にもなって周りの人にバカにされるぞ。
バナナ配りおじさんが来たぞってね。