6時起床。
最高の天気。
一昔前の自分なら
「絶好のパチスロ日和」とかほざいていた。
でももう違う。
そんなことに時間は使わない。
朝読書をして洗濯と掃除、年末の大掃除に向けて少しずつ動き出す。
そして洗濯が終わるまで「ういちとヒカルのおもスロいテレビ」見てた。
画面の中のういちさんはやっぱり絶好のパチスロ日和って言ってた。
昼ご飯を済ませて、何しようか考える。
たまには散歩でもしてみるか。
何にも考えずに携帯だけ持って歩きだす。
ふむ。
悪くない。寒いようでいて陽が当たると非常に心地よい。
むしろ暑いくらいだ。
一体何のために歩いてるのか分からないが、贅沢な時間のような気がしてきた。
普段と違う見せ方をしてくる景色
普段と違う音
いい時間じゃないか。
歩きながらそんなこと考えてた。
多分すごく暇なのかもしれない。
途中コンビニでアイスコーヒーを買った。
暑いのだ。
歩きながら口をつける。
美味しいな。
特にこだわりとかはないけどコーヒーは好きで毎日飲んでいる。
そういえばコーヒーっていつから飲めるようになったんだっけ?
大学の時には普通に飲んでたし、高校の時も親がコーヒー淹れた時は一緒に飲んでたし・・・
そうだ。
中学生の時だ。
あれは確か中学2年生の頃だ。
新しい担任が赴任してきて、その担任がとんでもなくめちゃめちゃな人だった。
多分何を言っても信じられないだろうなっていうくらいめちゃめちゃな人。
今でもあのときの記憶は全部幻なんじゃないかってくらいに破天荒な人だった。
そんな先生が僕にコーヒーを教えてくれた。
僕の中学校は全校生徒10人ちょっとの学校だったので、先生と生徒の距離も近かったし、授業も島特有のフランクな空気が流れていた。
担任は数学の先生なんだが、授業は離れにある「技術室」でしていた。
技術の授業の教室だが、この先生が私物化していたのでなんでもありの教室になっていた。
先生がいつも通り授業中にコーヒーを淹れていたときのこと。
なにを思ったのか、「飲むか?」と声をかけてきた。
勉強したくなかった僕らは二つ返事で駆け寄る。女子は即答で「いらん」と言っていたが。
多分人生で初めて飲む缶コーヒーじゃないコーヒー。
先生は僕たちに
「砂糖とかミルクなんて入れるなよ、そんな男になるなよ。」と言う。
そもそもそんなものなかった気もするが、僕らはバカなので「かっけー」と思って
「入れません」と力強く答えた。
ダサい柄のコーヒーカップに入ったコーヒを手に机に座ると、なんとも言えない気持ちが湧いてきた。
溢れる大人への憧れを胸に生きている中学生にとって大人っぽいことをするのは一番気持ちいいことなんだ。
これが大人の飲み物なのか。
高まる気持ちを抑えて一口すする。
「苦い」以外の感想はない。
隣の男子も同じ顔している。
先生はにやにや笑って僕らを見ている。
ここで苦いなんて言ったら子どもみたいだし(子ども)、もう飲ませてもらえないと思った僕らは「美味いっすね」としたり顔で言った。
正直ミロのほうが100倍美味しかったが、美味しいと言いながら飲み干した。
それからは週に1回くらいの頻度で僕らにコーヒーを飲ませてくれた。
たまに僕が「コーヒー飲んでいい?」と聞くと黙って叩いてくる日もあったが。
苦い苦いと思っていたコーヒーもいつしか普通の飲み物になっていた。
3年になるころには僕がコーヒーを淹れる係になっていた。
女子生徒は頑なに飲まなかったが、男子3人と先生で飲むコーヒーは美味しかった。
先生は授業中だがタバコを吸っていた。
先生がコーヒーを飲みながらタバコを吸う。
そんな先生の授業を生徒はコーヒーを飲みながら受ける。
あの時は当たり前の光景だったので特に疑問を抱かなかったが、今考えるととんでもないな。
ともあれ、僕のコーヒー人生はあの埃くさい技術室で始まったんだ。
今でもブラックしか飲まない。
だって男だもん。
余談だが、破天荒な先生に習った数学は僕の一番苦手な科目だ。
センター試験では200点満点で18点だった。
だって先生は僕らが問題を解けないと、教えるより先に殴ってきたもんな(笑)
それでもいい。
もっと大事なものをたくさん教えてもらったから。
今週のお題「最近あったちょっといいこと」
今日の散歩はこんなことを思い出させてくれた。
それだけでいいことだろう。
エモい思い出をありがとう先生。