むらよし農園

面白いことが書ければと。

【深夜特急に憧れて⑬】~ベトナムでアイドル気分?~

前回の話はこれ↓↓

 

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ベトナムでは日本語学校が人気

ベトナムについて数日が経ち、僕は後輩の働いている日本語学校にお邪魔させてもらった。

ベトナムでは日本語学校が多くある。

日本への留学を希望する人、日本で働きたい人、ベトナムにある日本企業で働きたい人、目的は様々だがとても人気があるらしい。

 

 

僕がお邪魔させてもらったのは、夜の部に通う大人向けのクラス。

全員が20代で、昼間は仕事をしている生徒さんがほとんどだという。

 

そんな意識高く勉強している人たちのなかに、部外者がふらっと入ってもいいのだろうか。

そう口にすると、後輩は

 

「絶対に大丈夫です。めっちゃ歓迎されますから」

と言ってくれた。

 

 

いざ校内へ

後輩と一緒に学校内に入る。

学校はこじんまりしていて、一見するとアパートのような感じだ。

 

僕は何故かサッカー日本代表のユニフォームを着ていた。

ここぞという場面で着ようと思って持って来ていた。

アウェーに乗りこむ日本代表気分を勝手に味わっていたんだ。

 

緊張しながら、ドアを開ける。

 

 

すると

 

 

キャーーーーーーーーーーーーー

 

 

という黄色い大歓声が聞こえてきた。

 

嬌声といってもいい。

 

僕は何が起こったのか分からなかった。

この嬌声は誰に向けられてるものなんだ?

まさか僕か?

僕は後輩の言葉を思い出す。

 

「めっちゃ歓迎されますから」

 

確かにめっちゃ歓迎されている。

生徒の8割は女性で、その半分くらいが立ち上がって拍手をしていた。

 

まるでアイドルになったような気持ちに。

後輩が僕をみんなに紹介してくれて、僕の自己紹介の番になった。

 

みんな真剣に僕を見ている。

僕は思い切って、

 

Xin Chào(こんにちは)

 

とベトナム語であいさつをしてみた。

 

するとまたも

 

 

キャーーーーーーーーー!!!!

 

コンニチワーーーーーーーーーーーー!!

 

 

という黄色い歓声が上がった。

 

 

アシタカ気分

大盛況の自己紹介を終えて、真ん中付近の席に座らせてもらう。

その時の周りの様子を表す的確な表現が見当たらないが、

『もののけ姫』で、アシタカがタタラ場で女性陣に混ざってタタラを踏んでいるシーンを想像してほしい。あのくらいには騒がれていた。

 

隣の席の女性は、スラっとして、メガネの似合うとても美人な方だった。

僕の席の周りだけ少しざわざわしつつ、授業が始まった。

 

授業中はさすがに静かになり、みんな真面目に受けている。

 

僕もみんなと一緒に黒板に書かれた日本語を読んだりしていた。

 

 

反則だろ

15分くらいが経過したころ、隣の女性が僕の肩をつんつんしてきた。

 

ドキッとして彼女のほうを見ると、机に置いてるスマホを指さしてきた。

そのスマホを覗き込むと、Facebookのページが開いてある。

 

そしてそこには僕のアカウントのページが表示されていた。

 

僕が自己紹介で黒板に書いた名前をメモっていて、検索したらしい。

 

彼女はぐっと近づき、小声で

 

「コレ、アナタ?」

と聞いてくる。

この距離感にドキッとしてしまう。

 

僕も小声で

「YES」

となぜか英語で答える。

 

 

すると、彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべて、僕の目をジーっと見つめながら、

 

 

ゆっくりと友達申請のボタンを押した。

 

 

 

心が打ちぬかれる音が聞こえた。

反則や。

審判、これは反則やん。

おかしいよこんなの。

心の中で、ヌルヌル秋山戦のときの桜庭くらい抗議した。

 

その後の30分ほどの授業の内容は、全く覚えていない。

 

人気者

授業が終わり、何人かの生徒に囲まれていろんな話をした。

みな明らかに好意的で、一生懸命に日本語で何かを伝えようとしてくれた。

お世辞にも、まだまだ上手とは言えない日本語だけど、僕と話をしたいという熱意がとてもうれしかった。

みんな、次は私、次は私と、競うように話しかけてくれた。

人気者になった気がした。

 

隣の彼女はその間、特に会話に入ることはなく、熱っぽい視線で僕を凝視してくる。

たまに僕がチラッと横目で見ると、例の悪戯っぽい笑みを浮かべてきた。

そして意味もなく僕の腕をつんつんしてきたりしていた。

 

これは完全にアレだろ、もうほら、アレでしょ。

僕は有頂天のまま、その日は学校を後にした。

 

 

まさか・・・

授業が終わり、後輩と晩御飯を食べに近くの店に行く。

すると30分くらいの間に、10人以上からFacebookでの友達申請が送られてきた。

 

みな日本語でメッセージをつけてくる。

 

とてもうれしかったのだが、僕は隣の席の彼女のことで頭がいっぱいになっていた。

 

僕は彼女の友達申請を許可し、プロフィール画面を開いた。

するとそこには・・・

 

 

 

 

ウェディングドレス姿で微笑む彼女の姿があった。

 

そう、彼女は既婚者だった。

 

 

反則やろ・・・

 

いくら僕でも、異国で修羅場を演じるほど物好きではない。

僕の旅、最初の恋は1時間半で終わりを迎えた。

 

 

しかし

 

「それでもいいじゃないか」

 

と、真剣に一晩中悩んだことは内緒の話である。

 

つづく