今週のお題「思い出の先生」
僕の中学時代は自分で思い出してもなかなかに濃かったように思う。
そんな数々の濃いエピソードのなか、ひときわ輝きを放っている思い出がある。
それが中学の時の担任の話である。
以前にも少し書いたことがあるが、この先生のキャラは抜きんでている。
今の時代では絶対にありえないような(当時でも)そんな先生。
今回はこの先生の強烈なエピソードを1つ紹介したい。
先生は数学の先生だが授業は全て、本校舎から離れた技術室で行っていた。
というよりも、先生はこの技術室を自分の城のようにして完全に私物化していた。
冷蔵庫や電子レンジを持ち込み、ソファまで持ち込んで半分住んでいるような状態だった。
見た目が完全にヤ〇ザだったのと、性格もほとんどヤ〇ザだったので校長も何も注意できない状態だった。
そんな先生の城である技術室でいつも通り数学の授業を受けていた時のことである。
先生は朝からなんだかそわそわして落ち着かなかった。
授業中も、プリントを配ってからは何も言わずに窓の外をじっと見ていた。
すると、
『ドンドン、ドンドン』
急に窓を叩く音が鳴り響いた。
ビックリして窓の外を見ると、見たことのないおじさんが立っていた。
知らないおじさんが授業中に窓を叩いてくる。
怖すぎるシチュエーションに僕らは絶句していると、先生が立ち上がって窓に駆け寄る。
窓を開け、仲良さそうに一言二言交わして先生は窓を閉めた。
方言が強すぎて何言ってるか全くわからなかったが、先生は僕らのほうを向いて一言。
「裏山に行くから今すぐついてこい!!」
そう言って小走りに駆けていった。
授業が中断したことに興奮して走ってついていく男子。
ブーブー文句言いながらのそのそついてくる女子。
とにかく2年生全員で裏山へと急ぐ。
裏山の入り口につくと、僕らはその場に立ち尽くして言葉を失った。
そこには見たことのない程デカい猪が横たわっていた。
正確には、猪がお腹を裂かれた状態で仰向けにされていた。
そう。窓を叩いて先生を呼びに来ていたのは猪を獲った猟師だったのだ。
いい猪が獲れたから見に来いよ的な?
アホかよ。
普通そんなシチュエーションはありえないわけだが、僕らは何故か猪の解体を見学させられた。
初めて見る動物の解体。
猪は手際よくさばかれていく。
血が溢れ、あたりに何とも言えない『生』の匂いが立ち込めていく。
女子たちはとっくに教室に帰っていっていた。
僕ら男子3人と先生で見学を続ける。
すると猟師がこっちを振り向き、「よし!」と声をかけてきた。
先生も嬉しそうに「よし!」と大声で返し、近づいていく。
猟師の手には赤黒い大きな物体があった。
表面に血を滴らせたその物体は、ピカピカとした艶を携えている。
なんだか見たことあるな・・・
猟師はその物体をまな板に置き、さらに見たことある形に切り分けていく。
これあれだ、
レバーだ。
僕がレバーだと気付いたと同時くらいに先生がそのうちの一切れを掴み、血まみれの手を僕の口の前に持って来て
「食べろ!!」
と怒鳴る。
ぬめっとした血がついている大ぶりに切られた生レバーである。
ヤ〇ザにしか見えない男が、血まみれの素手で生レバーを持って迫ってくる。
恐い。
恐すぎる。
固まってる僕に先生はまた
「食べろ!!」
と怒鳴った。
もうどうなってもいいと覚悟を決めた僕は、一口でレバーを頬張った。
熱い
いや温かい
血の味・・・
いやレバー?
コリコリしてる?
ん~
美味い!!
食べた瞬間は温度のことしか分からなかったが、最終的には美味いという感想に至った。
他の2人も同様に無理やり食べさせられている。
最後まで渋っていた友人は、レバーだけでなくゲンコツまで食らわされていた。
先生はレバーを食べた僕らを満足そうに見たあと、「先に教室に戻ってなさい」と告げ、猟師のおじさんと何やら話し込んでいた。
先生はチャイムが鳴っても教室には戻ってこなかったが、翌日の冷蔵庫にはきれいに精肉されたイノシシ肉があり、綺麗な皿に盛られた生レバーをまた僕らにふるまってくれた。
美味しかったなー
あれほど美味しい生レバーはあれ以来食べたことない。
また食べたいな。
テレビなどで食中毒のニュースを見るたびに、僕はこのエピソードを思いだす。
信じるか信じないかはあなた次第です。