先日髪を切った。
ここ何年も同じ床屋で同じ髪型にしてもらっている。
大学から変えることなく一途に同じ店に通う自分をいじらしいとすら思う。
基本ツーブロックで、長くない前髪は前に下ろしている。
その髪型が好きとかそういうことではなく、年々後退するおでこを隠したいという切実な気持ちがそうさせているのだ。
昨年、35歳を迎えた途端に一気に前髪が少なくなってきている。
そのことに気付いた時は、あまりのMハゲ具合に思わず「サイヤ人だったっけ?」と自分の出生を疑ってしまうほどであった。
そんな僕なので、前髪を上げるなんてことは絶対に選ぶ髪型ではない。
しかし、年末に地元に帰り、親戚のカリスマ美容師に髪を切ってもらった際、「むらよしさん前髪あげたほうがかっこよくない?」と言われたのだ。
僕は基本前髪の後退具合しか目に入ってなかったので驚いた。
その日から、前髪を意識はしていたが思い切ることが出来なかった。
そして先日。
いつもの床屋のお兄さんに言って、カットしたあとに前髪を上げるパターンのセットを教えてもらった。
これまで髪の毛をセットするなんて、会社外での大事な会議だとか、結婚式くらいのものだった。
いわゆるハレの日だけの特別なことだと思って生きてきた。
だが、大人の男は割とちゃんとセットしている。
僕だってそろそろいい大人じゃないか(35歳)
やるしかないっしょ。
床屋のお兄さんにきれいに整えられた僕の前髪は、これまでにないほどに整っていた。
久しぶりにちゃんと自分のおでこを見る。
「意外とかわいいおでこしてるんだね」
クラスの冴えない女子が、初めてメガネを外したのを目撃したイケメンのようなセリフが出てきた。
悪くない。
ハゲているとこを除けばそんなに悪くない(除けない)
新しい自分に出会えたような妙な手ごたえを感じた。
お店でおススメされた整髪料を購入し意気揚々と退店。
おススメの理由はもちろん
『髪へのダメージが少ない』
一択である。
残念ながら禿げ上がってしまった床屋のお兄さんは、ハゲた客に異様に優しいのだ。
そのまま着替えてジムへ行く。
驚いた。
髪型がいつもと違うだけなのだが、完全にいつもよりも躍動感がある。
いつもより筋肉が頑張っている。
もうダメだというところからいつもより粘れる。
そしていつもよりかっこいい。
何だこれは?
髪型が筋肉に何か作用するというデータは見たことがない。
だが明らかに違いが分かる。
大きなパフォーマンスの違いに、自分がハゲていることを忘れてしまいそうだ。
大満足で帰宅した。
明日から毎日自分でセットしていこう。
しっかり前髪あげていこう。
いいことしかない。
かっこいい大人になります。
翌日も朝からジムへ行く。
今日もしっかり追い込むぞ。
お気に入りのキャップを被り颯爽と家を飛び出す。
長年の習慣は簡単には変わらないのである。
今週のお題「習慣にしたいこと・していること」