常々、面白い店がないか探して歩いている。
美味しいってのはもちろんのこと、たどり着くまでのハードルが高い店であるほどいい。
ネット上には情報がないような、地元の人しか知らないような。
一筋縄ではいかない見た目のせいで入ることをためらわれるような。
当ブログで紹介したところだと『たこ焼きハウス逢坂』なんてのがその類の名店だ。
この度、このたこ焼きハウス逢坂に匹敵するような名店を高知県は安芸市にて発見したので紹介したい。
その店は安芸市の国道から少しズレた海沿いの道にある。
サラサラの砂浜が広がる気持ちの良い道だ。
その道沿いに『はま』はあるわけだが、まぁおそらく、その道を教えたとしてもきっと初見の人には見つけることは出来ない。
あなたの知ってるお好み焼き屋という概念には引っかからないからだ。
常日頃からその手のアンテナをビンビンにしてる人だけが見つけることが出来る。
その外観に驚くがいい。
え?まさかね?
そんなわけないよね?
もう使われてない倉庫かなんかだよね。
いやいやいや。
本気で言ってる?
グーグルマップで確認をする。
うん。間違いない。
ここが、お好み焼き『はま』である。
木製の小さな看板だけがお店であることを主張している。
僕は勇気を出して足を踏み入れた。
僕「やってますか?(ここはお店ですか?)」
店主「やっちゅうよー」
僕「どこ座ってもいいです?(ここはお店ですか?)」
店主「かまんよー」
僕は軒下の、テラス席的なテーブルに座る。
「もう少し座って待ちよってねー」
どうやら開店したばかりで、色々と準備をしていた。
僕の座ったところから見える店内の様子はこんな感じ。
完全に昭和52年といったところか。
足下の蚊取り線香がヴァイブスを足している。
おやっさんの準備が終わるまでにメニューを見てみる。
お好み焼き屋だが、意外なことに麺類も充実している。
そしてなんといっても安い。
メニューには、大・小とあるが、基本的に小が並だと思って間違いない。
中華そばが美味いという情報を得てはいたが、同時に「チャンポンは唯一無二やで」との話も聞いていたので、ギリ迷ってチャンポン小にした。
そしてお好み焼きも食べたくてミックス焼の小も追加。
おやっさんが、「チャンポンの卵が準備できてないき生卵でかまん?」と聞いてきた。
意味は分からなかったが、とりあえず親指を立てといた。
そうして届いたチャンポンがこれだ。
具材は一般的なチャンポンに似てなくもない。
だが決定的に違う。
最も大きな違いは『とろみ』だ。
もはや箸でスープがつかめそうなほどのとろみは確かに唯一無二である。
そして、件の生卵が見つからないと思いきや、麺の下に鎮座しており、いい感じにアクセントになっていた。
美味い。
あっさりとした中華スープ系の味わいだが、甘めで食べやすい。
550円という価格を考えてもかなりイケてる。
とろみのあり過ぎるスープが麺に全力でしがみついてくるので、食べ終わる頃にはスープもほとんどがなくなっていた。
そのとき、ミックス焼を焼いていたおばちゃんにこんなことを聞かれる。
「卵とマヨはどうする?」
そんなコールが存在していたとは。
よく分からなかったがとりあえず「ありありで。」と答える。
すると、
「卵は生?焼き?」
むむ。
「焼きで」
おばちゃんはうなずいて冷蔵庫に向かう。
初見の店の、このようなやり取りは非常に興奮するんだ。
僕の知らないローカルフードのローカルルール。
一体どんなものになるのか楽しみだ。
そう思いながら来るのを待っていると、視界の端に1枚の紙が目に入ってきた。
なんと卵もマヨも別料金だった。
当たり前だ!
何でも無料だと思うなよ!
最近巷で話題の、二郎系ラーメン店でのトラブルを思い出しながら、そもそも卵30円は安すぎるんだよなとか思ってた。
そしたらミックス焼到着。
めちゃめちゃに美味そう。
突き刺さったコテがなんとも言えぬ。
マヨありにしてよかった。
卵は薄く半熟に焼かれて上にのっている。
卵ありにしてよかった。
実際にめちゃめちゃ美味しかった。記事はふわふわだし甘みと苦みと辛みと旨味が混在した深い味わいにお店の歴史を感じずにはいられない。
いやーいい店だ。
この日は実は40キロ以上自転車を漕いで来たんだが、その達成感もあってか抜群にいい時間だった。
味は美味いし、接客は面白いし(おやっさんは常に片手にニンテンドーSwitch持ってた)、清潔感は・・・
飲食店を探す際に、何を重要視するのかという話だが、
味?量?清潔感とか?映えとか?接客とか?
そういうのが大事ってのは分かる。
むしろ全て揃ってるお店を探すのが普通だってことも。
でもたまには、たまにはそういうの無視で、なにかとんでもない引力というか、迫力に振り切ってるお店に行くのもまた一興だと思う。
そうすればこんないい店に出会えるかもしれないから。