むらよし農園

面白いことが書ければと。

【深夜特急に憧れて⑨】~ボクらのハノイの夜~

前回の話はこれ↓↓

 

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ハノイ到着

数々のバスを乗り継いで、やっとの思いで到着したハノイ。

ベトナムの首都である。

 

たくさんのバスが並ぶ雑多なターミナルに下ろされた。

時刻は20時を回っている。

着いてすぐだが、ゆっくりしてる暇はない。

 

宿を探さなければ。

 

香港から一緒だったタッチーさん、そして南寧から一緒になった、キッシーさんとともに、宿探し。

Wi-Fiが使えないので、キッシーさんの持ってる地球の歩き方が頼り。

 

ホアンキエム湖の近くにある安いドミトリーを見つけ、即決した。

 

なかなかの古さだし、薄暗い場所にあるし、気味の悪さは感じた。

しかし、時間がなかったのと、疲れていたのと、ラッキーハウスでボロさには慣れてたので、特に考えることなく決めれたのだ。

 

荷物を置いてすぐに外に繰り出した。

 

 

ハノイの街ブラ

めちゃめちゃお腹が空いてたので、もう目についた店に入ろうと決めていた。

宿から歩いて数分、かなりネイティブ感のある屋台で念願のフォーを食べた。

『フォー・ボー』という牛スープのフォー。

美味しかった。

疲れた体に沁みわたる。

フォーと一緒にビールも。

もちろん飲むのは『BIA HANOI』

初めて飲んだが、なんとも飲みやすく一発で気に入った。

お店を出て、その辺をブラブラしてみる。

 

 

ボクらの時代

 

屋台を出てすぐに、なかなか賑わっている通りを見つける。そこに、周りの屋台とは一線を画す洒落た建物を見つけた。

 

名前は『CONG CAPHE』

東京の街中にあっても何の違和感もないほど洗練されてたし、センスのいい雰囲気だった。

 

そこで軽くビールなど飲みながら遅い時間まで喋っていた。

 

三角形の不思議なテーブル。

 

そこに三人で座り、あれやこれやと話している姿は完全に『ボクらの時代』だ。

 

ひとつ違うのは、僕らが全員汚らしい格好をしていることだった。

 

 

ギリギリのシャワー

12時を過ぎたころ、宿に戻った。

交代でシャワーを浴びる。

 

年功序列ということで、キッシーさん、タッチーさん、僕の順に。

 

最初にシャワーを浴びていたキッシーさんが、シャワーを浴びながら大きな声で語り掛けてきた。

 

「すっげーちゃんと熱いお湯出るよ。こんなちゃんと熱いお湯久しぶりだ。」

 

ちゃんと熱いっていう意味は分からないが、これまでぬるいお湯しか出ない宿にいたんだなと思った。

このとき、ハノイはまぁまぁ寒く、熱いお湯が出るのは正直うれしかった。

 

自分の番を待ちながらタバコを吸っていると、またキッシーさんが大声を出す。

 

 

「ちょっとぬるくなってきたかも・・・」

 

それはヤバい。

 

僕とタッチーさんは、キッシーさんを急かした。

こんな気温でぬるいシャワーなんて無理。

 

タッチーさんが入る。

お湯を浴びながらタッチーさんは大きな声で僕に言う。

 

 

「安心して!全然お湯だよ!」

 

僕はホッとした。

きっと、キッシーさんの最初のお湯が熱すぎただけだな。

 

数分後、またも浴室から声がする。

 

「ヤバい、ぬるくなってきたかも・・・」

 

それはマジで困る。待ってる間に体も冷えてきたのに。

 

僕はタッチーさんを急かした。

 

やっとのことで僕の番に。

 

恐る恐るシャワーを浴びる。

 

全然熱くはないが、まだお湯だった。

これならいける。

 

僕は急いで髪を洗い、体を洗った。

そして、その泡を流すために再びシャワーを出す。

 

ぬるい。

 

明らかにさっきよりもぬるい。

 

僕は急いで流していく。

 

お湯はどんどん温度を下げていく。

僕が全身を洗い流し終えるちょうどのタイミングで、シャワーは水になった。

 

危なかった。

 

東南アジアの安宿ではあるあるであるが、とにかくお湯が不安定である。

全くでないこともあるし、最初の数分だけお湯が出るというパターンも多い。

 

まさにギリギリの戦いだった。

 

 

深夜のタバコ

シャワーを浴びて、歯を磨いて、さて寝るかといってみんな布団に入る。

すると、タッチーさんがタバコに誘ってきた。

 

タッチーさんはいつもである。

香港にいた時から、僕が歯磨きをして寝床に入ろうとすると誘ってくる。

 

「よっしー、タバコ行かない?」

 

なぜ歯を磨いたあとなんだろう。また磨かなきゃならないのに。

最初はそう思っていたが、僕はこの時間が好きだった。

 

タバコを持ってバルコニーへ出る。

空気はさっきよりもひんやりとしている。

 

タバコに火をつけ煙を吐く。

空気が澄んでいるからか、寒いからか。

いつもより濃い煙だ。

静かな異国の地を見下ろすビルの3階。

 

僕がクールマイルド、タッチーさんはマルメン。

 

「旅」してる実感というのはこういう時に湧いてくる。

 

少し小声でいくつか言葉を交わして、タバコを消す。

そしてまた部屋に戻る。

 

ハノイの初日が終わった。

 

 

つづく