早朝に起床し、弁当を作った。最近は毎日そうしている。
朝食を食べる。
昨日の不燃ごみ回収の際に、大量に断捨離をしたおかげで、少し広くなった部屋は気持ちがいい。
天気も悪くないし自転車通勤だ。
自分の中にいい風が入ってくる。僕はこの風を
『丁寧な暮らし風』と呼んでいる。
なんとなく、体にいいこと。
なんとなく、環境にいいこと。
なんとなく、意識高いこと。
これらのことをしていると、吹いてくる。
そしてその風は飲み会の帰りにラーメンを食べることで、一瞬で止む。
職場について午前中の仕事を忙しく終える。
さて、昼にしよう。
自分で作った弁当なので、お弁当の中身はなんだろうな~という遠足チックな楽しみはない。
しかし、それでも食べるのは楽しみだ。
鞄を開け・・・
弁当忘れた。
自分で作った弁当を、忘れた。
人生で初めての失敗である。
僕は『お弁当』という存在そのものが大好きで、特別な思いを持っている。
そんな僕が忘れるなんて。
僕はショックだった。
仕方ない。
家に帰って晩ご飯として食べるか。
いや、今日は残業でそんなに早く帰ることは出来ない。
今日の気温だと傷んでしまう。
悩んだ末に僕は有休をとって家に帰った。
僕には、自分で作った弁当を捨てるなんてことは出来ない。
自転車で家に帰り、僕は家で弁当を食べた。
何とも不思議な気分だった。
でも美味しかった。
作った弁当を捨てたりすることなく食べれてホントによかった。
次からは忘れるなよこのデコスケ野郎。
弁当を食べて、職場に戻っているときのこと。
前から、やたら急いだ様子の外国人が自転車で向かってきた。
見た感じ、インド系の中年の男性だった。
汗をかきながら自転車を漕ぐ彼は、僕を見つけるなり
「チョット、シュミマセン」
と、かなりカタコトな言葉で話しかけてきた。
他にも通行人がいる中真っすぐに僕だけを見ている。
その目には焦りの色が浮かんでいる。
僕はすぐに自転車を止めて、話を聞くことにした。
「ア、アノ、エート、オシエテクダサイ!ドコデスカ?」
「何がですか?何を探してるんです?」
「エーート、ドコアリマスカ?アノ、、、、、パチンコ!」
僕は驚いた。
まさか、日本語もはっきり話せないような外国人に、パチンコ屋の場所を聞かれるとは思ってなかったから。
しかし、この真っすぐな目。
この血走った目は、純粋にパチンコに行きたい男の目だ。
他にもたくさん人がいる中、一直線に僕に向かってくるなんて。
見る目があるじゃないか。
おそらくこの周辺を歩いている人間で、近場のパチンコ屋の場所をすべて把握していて、英語が話せる人間は僕しかいないだろう。
僕はなんだかうれしくなって、自転車を降り、本気で道案内をした。
英語なんて久しぶりに話したが、話せるもんだな。
案内を終えると、彼は大声で
「アリガト!」と言ってマッハで走り去っていった。
僕は、「Good luck」と言いながら、大きく手を振った。
負けんじゃねえぞ。