むらよし農園

面白いことが書ければと。

【深夜特急に憧れて①】~出発までの過酷な日々~

僕は大学を卒業した後、ほんの少しの間バックパッカーをしていた。

自分の記録のためにも、当時のことを思い出しながら、何話かに分けて書いてみたいと思う。

 

長くなるかもしれないし、何かが起こるわけでもないです。

また、不定期になると思いますが、あまり期待せず、暇つぶしに読んでみてください。

 

 

 

 

 

26歳になってしまうぞ

 

 

17時半。まだ太陽高い夏のコンビニの喫煙所。

右手にクールマイルド、左手にはモンスターエナジー。

 

8時から17時までのバイトを終え、疲れ切った顔で煙を吐く。

そして、30分後には別の飲食店でのバイトが待っている。

 

絶望の色濃いバイト15連勤目の日のこと。

歯を食いしばり自転車を漕いでアルバイトへと向かう。

 

この夏で25歳になった。

今年が最後のチャンス。

もたもたしてると26歳になってしまうぞ・・・

 

 

 

深夜特急との出会い

 

 

大学4年生のとき、沢木耕太郎さんの「深夜特急」を読んだ。

バックパッカーのバイブルと呼ばれる本である。

 

友人に薦められ、ボロボロの文庫版を手に入れた。

 

最初から最後まで1ページも退屈しない、本物の旅の記録がそこにはあった。

沢木先生が旅していた当時、今ほど海外のハードルは低くなく、治安も交通の便もずっと悪かったはずだ。

だが、いやだからなのか、この刺激的な物語は、旅に出たいという強烈な欲求を掻き立てる。

 

 

僕は一気に沢木先生のファンになり、著書を読み漁った。

 

沢木先生は、「海外へ旅をするなら26歳までに行った方がいい」いうことを言っている。

いわゆる旅の適齢期は26歳説である。

なぜ26歳で旅を?という問いに

 

「未経験という財産があったから」

 

これだ。なんて痺れる返しだ。

 

 

この日から、僕は26歳までには旅に出ようと誓ったのだ。

 

 

 

25歳の決意

 

大学を6年通ってやっと卒業した僕は、なんの就職も決めぬままに4月を迎えていた。

学生と社会人の狭間、スーパーフリータータイムに突入である。

 

世間から見れば、大卒の資格を無駄にしたゴク潰しのクソニート野郎だった。

 

「22歳で卒業して就職してたら、2年間でどんだけのお金稼げてたと思う?しかもまだ遊ぶの?」

「いいな~まだ学生みたいな生活が出来て」

「社会に出るのがたったの2年間遅れただけって思ってる?社会人のキャリアで2年間は結構でかいよ?(笑)」

 

周りからは色んなことを言われる。

 

僕は表面上はヘラヘラ笑って過ごしていたが、心の中では反論していた。

「社会人のキャリア2年分や3年分がなんぼのもんじゃい。僕には未経験という財産があるんだぞ」

強がる気持ちとは裏腹に、ホントにこれでよかったのかという不安は常に付きまとった。

しかし、もう後には引けない。

こうなったらどんな形でも旅に出ねば。

 

貯金0円からの戦いが始まった。

 

 

 

貯まらないお金

 

旅の資金を貯めるという決意のもとアルバイト生活を始めた僕は、これまでしていたアルバイトに加えてちょくちょく日雇いをプラスすればなんとかなると思っていた。

 

それで無理なく冬までにお金を貯めて出発するというプランは難しくないと思っていたんだ。

 

しかし

 

4月、5月、6月と経過し、僕の貯金はほぼ0円のままだった。

 

学生の頃よりは働く時間も増えたのに、余分に手にしたお金はほとんどお酒とギャンブルに消えていった。

クソが!

 

自分のアホさ加減に気付いた僕はアルバイトを増やすことに。

短期のバイトを合わせて4つのバイトを掛け持ちすることになった。

 

 

増えていくモンスターエナジー

 

それからの日々は過酷を極める。

冒頭に書いたような、バイト終わりにバイトに行くというバカな生活。

朝から行くバイト先の棚の上に1日1本ずつモンスターエナジーを積み重ねていく。

エナジードリンクに、そんな頑張れる力があるなんて思っていない。

一種の儀式として、毎日飲んでいた。

 

8時から17時まで働く。

18時から23時まで別のバイト。

そんな毎日が続く。

 

当然体はもちろん、精神的にもボロボロになっていく。

そのストレスから逃げるために酒を飲み、隙あらばパチンコ屋に。

昼飯や、晩飯もお金をかけてしまう。

これも、今にして思えばストレスから身を守る防衛本能だったのかもしれない。

 

結局働いている時間のわりにお金は貯まらない。

 

貯金は少ししか増えず、会社の棚にモンスターエナジーが増えていくばかりであった。

 

 

つづく