『通』と呼ばれる人がいる。
文字通りその道に精通し、楽しみ方や味わい方を熟知していることを言う。
人間だれしも、何かしらの道で通になりたいものだ。
『半可通』という言葉もある。
これは、たいして知りもしないのに知ったふりをしたり、通ぶる人のことを言う。
これはダサい。
呼ばれたくない称号1位待ったなし。
しかし、簡単に通にはなれない。
通になるにはいくつもの手順を踏まなければならない。
その第一歩が「通う」ことだろう。
足しげく通うことこそが通への近道。
ということで僕は
「天山」に通うことにした。
そう。天山通になりたいんだ。
先日初めて訪れたことで一発で気に入ってしまい、この店の通となってみんなにドヤりたいと考えたのだ。(ドヤれない)
日常の会話の中で
「天山の天津飯食べたことある?」
「あぁ美味しいよね。餡が濃厚なのに優しくて飲めるよね。」
みたいに、どんなメニューを聞かれても答えられるようになりたい。(そもそもそんな会話は一生出てこない)
ということで、天山の全メニューを制覇することに決めました。
そして何が一番美味しいかを調査したいと思います。
ということでタイトルもちょっと趣向を変えて連載っぽく。
13時過ぎ、二日酔い気味の体を癒すために天山へ向かう。
今日は先輩と二人。
店内はちょうどテーブルが一つだけ空いており、待たずに着席することが出来た。
さて何食べようかな。
どのみち全部食べるわけだが、やはり迷ってしまう。
先輩が豚丼をチョイス。なかなかやるな。
僕は前回隣の人が食べていた味噌ラーメンにしよう。
「すいませーん。豚丼の大盛りと・・・みっ・・・黒ゴマ野菜担々麺の大盛りで」
土壇場で何故か覆してしまった。
辛いもの食べて汗出してスッキリしたかったのかもしれない。
先に先輩の豚丼が届く。
ちょ待てよ!
そんなに美味しそうなんて聞いてないよ。
思ってたんと違うけどめっちゃ美味しそうやん。匂いもエグイよ。
自分のが届く前にちょっと敗北感すら感じてしまうほどの豚丼のビジュアルに驚きを隠せない。
するとそこに僕の黒ゴマ野菜担々麺が来た。
お、おう。
思ってた担々麺とは全く違うものが来た。
独特過ぎるその見た目に僕は少し後悔をしていた。
やはり、多くの人が頼んでる酸辣湯麵にした方がよかったのか?初志貫徹で味噌ラーメンだったのか?
いや、もう遅い。目の前の黒ゴマ野菜担々麺を味わおう。
いただきます。
匂いはめっちゃいいんだよな。でも担々麺じゃないな。
ズズッとスープを一口。
めちめちお美味しい。
濃い中華スープに黒ゴマの風味がドカンと乗っかる。
あーはいはいこれはアレね。
美味しいやつだわ。
すぐさま気持ちが切り替わる。
野菜もシャキシャキでボリュームもたっぷり。肉はひき肉ではなく、豚の細切れが使われていた。
思い描いていた担々麺ではない。
しかし美味しい。あのビジュアルからは想像もできない美味しさにニッコリ。
能力値を味に全振りした底力を感じる。見た目はセメントみたいだけどね。
辛さもほとんど感じないし、坦々感はなかなか見つからなかったが、これはこれでかなりあり。
スープを全部飲まないダイエットをしてる僕だが、あと一口、もう一口とスープを飲むレンゲが止まらなかった。
底に行けば行くほどスープは黒さを増す。
味も黒ゴマの風味が強くなってくる。その味の変化を楽しむうちにほとんど飲んでしまった。
いやーあれです。
やっぱりこの店美味しいです。
また早く行きたい。
必ず全種類食べよう。
通いつめよう。
半可通でなく、しっかりと通になる。そう決意を固くしたのであった。