夜中から始まった猛烈な腹痛は朝方になっても治まることはなかった。
界王拳10倍の反動は大きかったということだ。
午前中は朝から少し遠出の仕事をこなす。(トイレ3回、ヨーグルト1本、ソルマック1本)
胃疲れというか、胃が荒れてるのか、常に苦しい戦いを繰り広げる。
こんな日こそ何も食べずに、胃を休めたいところ。
だがそんなことではいけない。
少しでもいいから食べないと。
今日は学ぼう。
優しくて消化によさそうなものを。
そこでやってきたのが相生町の『ひろし食堂』。
味のある暖簾と、昔の名残か古びた屋台がいい雰囲気を出している。
そして何よりも名前な。
『ひろし食堂』色んな想像が出来る
料理をする頑固おやじの名前がそうなのか、息子の名前からとったのか、円広志からとったのか。
ガラっと開けて暖簾をくぐると、意外といっちゃ失礼かもしれないが、ほとんど満席。
そして厨房には元気のいいおばちゃんが二人だった。
まさかの、ひろしが作ってるわけではなかった。
ひろし食堂のメニューは
らーめん、味噌らーめん、炒飯。
そして、ご飯と玉子焼きがついてくる『セット』と半炒飯がついてくる『半チャンセット』がある。
ご飯に卵焼きがついてくるなんて斬新。
炒飯が美味しいと噂だが、今日は『らーめんセット』をば。
見た目から優しい。そして味も。
見た目から味を想像してみてほしい。
想像した味よりもうちょっと優しくて旨味がある。
最初の何口かで古い記憶が蘇ってきた。
小学校から通っていた地元のあのらーめん屋。
おばあちゃん一人で切り盛りしてるネイティブ民100%の名店だった。
日差し強くなる初夏の昼下がり。
半ドンの学校を終えた土曜日の昼ご飯。
父と二人でよく行っていた。
メニューはらーめんとうどんとおにぎりのみ。
らーめんとうどんっていう二本柱なのがよく考えれば不思議だがあの時は何も思わなかったな。
僕はらーめん、父はうどん。
450円のラーメンに、50円のおにぎり。
そしてたまーに。ホントにたまーに父が瓶に入ったリンゴジュースも買ってくれたっけな。
ひろし食堂のらーめんを食べることで、今はもう閉まって久しいあの店のあの味が蘇ってきた。
エモーショナルな夏の昼下がりを思い出しながら食べ進めると、またもや古い記憶が蘇ってきた。
アジアを一人でフラフラ回っていた頃のこと。
ベトナムの小さな田舎町にしばらく滞在していた。
そしてその町の地元民が通う小さな食堂に毎日通っていたんだ。
よく食べていたのは「フゥートゥーコー」という料理。ネイティブの発音を僕なりに書き起こしているので正しい名前なのかは分からない。
だが毎日「フゥートゥーコー」で注文出来ていた。どんな料理かというと汁なしのビーフンのようなもの。ちなみに「フゥートゥー」と言えば、汁ありが届く。
マジでめちゃめちゃ美味しいから。
毎日毎日、昼時になると現れ、たどたどしい言葉で注文する小汚い外国人である僕を、お店のおばちゃんは優しく迎え入れてくれた。
いつしか僕が行くと
「コー?」
と笑いながら声をかけてくれるようになった。
これは「フゥートゥーコー」なのか「フゥートゥー」なのかどっちなんだい?という意味で聞いている。
僕は笑顔で「コー」と答える。
そんな懐かしい記憶がどうして急に思い出されたんだろう。
しかも地元とベトナムの記憶なんて何のつながりが?
あっ、今食べてるこのらーめんの味、地元のあの店のらーめんの味とベトナムの「フゥートゥー」のスープの味と一緒だ。
完全に一緒だ。
『味の素』の味だ。
そういえばベトナムのあの田舎町には味の素のデカい工場があったな。
通りで何食べても日本人の味覚に合う味だったんだ。
これは全然けなしてるとかそんなんじゃなく、味の素をうまく使いこなしてることを褒めている。
だって美味しいもん。
いいことか悪いことかは置いといて日本人はこの味に慣らされ過ぎているのかもな。
そんなこと思いながら完食。
うん。食後に口のなかが少し軋む感じとか確実に味の素だな。でも普通に美味しかったよ。
日本人が一番好きな味って、塩とか醤油とか味噌とかじゃなくてもう味の素になってる説。
今後検証してくれる人いませんか?
水曜日のダウンタウンさんよろしくお願いします。