高知に移り住んで15年になる。
坂本龍馬をはじめとした、偉人を多く輩出し、海・山・川と自然環境も抜かりなく美しい。ゆったりとした時間が流れ、お酒に寛容な文化もどことなく外国チック。
そんな魅力の多い高知県においてもっとも大きな魅力が「食」だ。
海の幸、山の幸、川の幸、どれも美味しく、独自の食文化を形成している。
そしてその先頭を走るのが、カツオである。
全国トップクラスの水揚げ量を誇り、
「高知と言えば・・・?」の問いにも多くの方が『カツオのたたき』と答えることだろう。
実際高知のカツオのたたきは、県外のものとは比べ物にならない。
初めて食べた方は驚くこと間違いないだろう。
まぁ僕はもう食べれないんだけどね。
食べれなくなった理由はそのうち。
しかし、高知におけるカツオの○○猛プッシュなやり方には少しうんざりとするものがある。
カツオの・・・
たたき・・・分かる。
刺身・・・分かる。
煮物・・・分かる。
カルパッチョ・・・分かる。
コロッケ・・・わ、分かる。
バーガー・・・分かる?
パイ・・・???
そう、どこもカツオで何かを作りすぎなのである。
全てマズいとは思わない。
美味しいものはあるが、正直カツオじゃなくてもいいものが多すぎる。
なので僕はカツオの○○は頼まないようにしていた。
むしろカツオ自体を遠ざけていた。
しかし、今回初めて僕のカツオに対するガードをこじ開ける料理に出会った。
それが、「カツオのボロネーゼ」である。
これまでの僕なら見向きもしなかったような料理である。
しかもこのメニューを見つけたのが日本料理屋の『下元』なのも不思議だった。
誰がこんなもん食べるんだ。騙されんぞ僕は。
大人しく『鯛塩らーめん』食べようと思ってメニューを見てると、高貴な雰囲気の女将さんが小声で、
「騙されたと思って頼んでみて。」
と、僕の心を見透かしたように言ってきた。
呆気にとられた僕は、女将さんのいたずらっぽい笑みに引っ張られるようにボロネーゼを注文した。
届くまでの間、これでよかったのかと自問自答。
せっかくの大事な一食をもったいないことしたかな?とか、いつも保守的すぎるから冒険も必要だ!とか、自分の中で言い合いをすること約10分。
ボロネーゼが到着。
見た目は普通のボロネーゼ。
いや普通以上に美味しそう。
香りもよく、魚臭さなど微塵もない。
思いっきりフォークに巻き付け一口。
めっちゃボロネーゼ。
めっちゃ美味しいボロネーゼ。
日本料理屋らしく、少し和風で甘めなテイスト。
ひき肉をすくって食べてみて初めて、お肉じゃないのかな?
と気付く程度。
お肉よりも噛み応えがあり、旨味も効いてる。
これはなかなかありだな。
豚や牛に比べてカツオは低カロリーで脂質も低い。
1億総ダイエッター時代においては、かなり流行ってもよさそうな仕上がり。
僕は夢中で食べた。
もう少しで完食という時に女将さんが、
「残ったソースをご飯にかけても美味しいですよ」
と囁いてきた。
無論のっかる。
美味ぇや。
大満足でした。
僕は最後まで女将さんの手のひらで踊るだけ。
その接客、そのホスピタリティに脱帽して退店。
ちなみにこの「鰹のボロネーゼ」は通常メニューではなく、期間限定というか、週替わりっぽい雰囲気だった。
なので、帰り際に「レギュラーメニューにしてください。そしてそのあかつきにはバゲットつきなんてのもどうでしょう」と提案すると、にこやかに笑いながら
「それは美味しそうね」と言ったのでした。
レギュラー入りを楽しみに。