むらよし農園

面白いことが書ければと。

僕はまだいいかな

なかなかに忙しい毎日を過ごしている。

 

3月中にやらないといけないことも山ほどある。

数年前の3月はここまで忙しくはなかった。

 

年々任される仕事も増え、責任も増す。

 

仕事というのは上の立場になるほど忙しくなると、島耕作シリーズに書いていたがその通りなのかもしれない。

 

とは言うものの、そこまで上の立場でない僕がこんなに忙しいのも考えものである。

 

あまりにも忙しいので、忙しいことにムカついてすらいる。

 

というわけで、思い切って午前中の仕事を休むことにした。(どういうわけで?)

 

ただでさえキツキツなスケジュールなので、少しでも空けば休んでしまおうと思ったのだ。

 

バカかもしれないけど、どうにもこうにもならない現状を打破するために休んだ。

休んだと言っても午前中だけなところに、僕の会社への小さな忠誠心と、思い切って傾くことの出来ない小心者さが表れている。

 

 

休んで何をしたというと、ジムに行ってサウナに行っただけだ。

 

早朝から起きてジムに行き、そのまま朝からやってる近くの温泉施設へ。

 

夜にはすさまじいほど人の多いところだが、朝一なら空いている。

 

忙しい日々から逃げるために飛び込んだ温泉は何ともいえない気持ちよさがあった。

 

朝からサウナに入れるなんて贅沢だよな~そう思いながら外気浴をしていると、露天風呂に入ってる男性に目が止まる。

 

こんな朝から温泉に入りに来る人は、ほぼ全員お年寄りである。

 

ほぼ全員おじいちゃんなので、違いなんて分からないが、その人は何故か目についた。

 

 

「あれ?どっかで見たことあるな・・・」

 

 

しばらく考えた末に分かった。

 

同業のAさんだ。

 

何度か打合せなんかで顔合わせたことあるな。

でも何でこんな時間に・・・

 

 

あっ、定年退職するって言ってたわ。

 

そうか、ということはもう有給の消化に入っているのかな?

 

だからこんな時間から風呂入りに来れるんだな~

 

そんな感じで特に気にもせず、話しかけることなく僕も外気浴をしていた。

 

Aさんは露天風呂でとても気持ちよさそうに入浴していた。

 

仕事場で会う時とは全然印象が違う。

 

とても穏やかな表情をしていた。

心の底から気持ちのよさそうな、なんというかダルいことから解放されたような晴れやかな顔をしていた。

 

そうか。

 

仕事から解放された男はあんな風に穏やかな顔になるのか。

 

確かに羨ましい話だ。平日の朝から温泉入りに来てるんだもん。

 

どこかに旅行に行ったり、買い物したりといった、特別なことをしなくても、朝から温泉に入るだけでも十分すぎるくらいに幸せなことなのかもしれない。

 

僕もいつかはあんな風にゆっくりリタイヤする日が来るんだろうか。

 

少しセンチな気持ちになった。

 

僕はまだいいかな。

 

僕は、働けるなら働いていたいな。

 

そんな風に思った。

 

だって、

 

とても穏やかで気持ちよさそうな顔をしているAさんは、ほんの少しだけ老けて見えたから。

 

何もない、何してもいい、何もしなくてもいい。

 

 

それはとても魅力的に思えるが、ひどく退屈なものかもしれない。

 

 

僕は、予定よりも少しだけ早くサウナを切り上げ、急いで着替えて職場へと向かった。

 

ムカつくくらい忙しいけど、頑張って働いてみるか。

 

春は人を悩ませてしまうね。

 

今週のお題「小さい春みつけた」


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