昨夜のこと、意識の高い晩ご飯を食べ終えた僕は打ちっぱなしへと向かった。
前回のラウンドで、少しばかりドライバーが開眼しそうだったので、しっかりと復習し、ものにしようと思ったのだ。
1時間とちょっと、しっかり素振りもしながら打ち込み、いい手ごたえで練習を終える。
少しだけお腹が空いてきた。
晩ご飯はところてんと、納豆と厚揚げしか食べていない。
時刻は22時を過ぎている。
こんな時間に何か食べるのもなと思い直し、家路を急いだ。
もう少しで家に着く手前の坂道を上り切った時に、目の前にきれいな月が現れた。
雲の切れ間に浮かぶ月を見て、ふっと頭に浮かんできた言葉。
『月見バーガー』
僕はアクセルを踏み込んで家の前を通過した。
今シーズンは、月見バーガーが豊作らしく、多くのチェーン店が月見バーガーを出している。
王道のマックはもちろん、ロッテリア、ケンタッキー、コメダなど様々な月見バーガーが展開されている。
そのなかで僕が最も心惹かれたのが
モス「月見フォカッチャ」である。
僕はモスが大好きだ。
マックにはほとんど行かないが、モスはよく行く。
これは、僕の島にモスしかなかったことが原因だが。
過去最も食べた個数は7個である。
もはやモスのプロと言っても過言ではない。
月見だってなんだってモスが一番のはずだ。
最寄りのモスに到着し、ドライブスルーでもしようかとゆっくり侵入しようとすると
「 お詫び 大変好評のため、月見フォカッチャは本日売り切れました。」
そのまま文字通りスルーして再び国道に出る。
諦めて帰ろう。プロが聞いて呆れらぁ。
またの機会に食べることを決意し再び家路を急ぐ。
車からは最近好きになったばかりの『ハンバートハンバート』が流れている。
やっぱりいいなハンバートハンバートは。
ハンバートハンバートって変な名前だな。
たしか、なんか童話?とかなんかの主人公だっけハンバートハンバー・・・
ハンバーグ?
ハン・・・バーガー・・・
僕は別のモスに向かってアクセルを踏み込んだ。
そこは家から車で20分ほどかかる店舗。
大きな通りに面しているし、規模も大きい。売り切れることなんかないだろう。
お店にはお客さんもいて、ドライブスルーにも数台の車が並んでる。
そして、どこにも件の張り紙はない。
やはりこういう繁盛していて、規模も大きい店は売り切れないな。
あとは、ノーマルの月見フォカッチャにするか、バーベキューフォカッチャにするかという問題と、単品にするかセットにするかという問題がある。
時間も遅いし、極力食べ過ぎたくはない。
でもせっかくだからセットで満足したい・・・
悩んだ挙句僕は、月見フォカッチャの秋トクセットにすることにした。
ドライブスルーで自分の順番が回ってきた。
「月見フォカッチャの秋トクセットください」
「大変申し訳ございません、本日売り切れとなっております。」
張り紙しててくれ。
5秒悩んだ挙句、
「分かりました。じゃあいいです」
そう言って帰ろうとするが、前には注文を終えて、商品を受け取り待ちの車が数台。後ろにはまた数台の車が並んでいる。
挟まれて身動きが出来ない僕は、その地獄から解放されるのに15分の時間を要した。
クソが。
いじめかこれは。
最後、商品受け取り口をスルーする際の女性店員の顔ときたら。
恥ずかしくて死ぬかと思った。
どこがプロやねん。
2度もいけずを食らった僕は
悔しくて悔しくて浮気することにした。
滅多に行かないマックでワンナイトラブかまそうかい。
マックのチーズ月見。
実を言うと人生初の月見バーガー。
普通のマックよりもずっと美味しかった。
さらに
サムライマックの『炙り醤油風 ダブル肉厚ビーフ』
こちらも初めて食べた。
もうね。
驚いた。
健康というものを1ミリも考えさせない強烈なジャンクさ。
そしてそれを23時近い深夜に車の中で食べるという行為がブーストをかける。
あまりの不健康な美味しさに脱帽だ。
一口かじるごとに脳から、「もうやめろ」という指令と、「もっといけ」という応援がダブルでやってくる。
そのアンビバレントな感情に支配され、気が付けば無我夢中でかぶりついていた。
正直な感想として、恐いと思った。
マック恐い。
みんなこんな恐ろしいものをいつも食べてるのか。
木村拓哉恐い。
モスのせいで禁断の味を知ってしまった夜。
どうか一夜限りの関係でありますように。
早く本妻(月見フォカッチャ)にたどり会えますように。