むらよし農園

面白いことが書ければと。

僕は覚えてる

一段と寒くなってきた。
久しぶりに自転車出勤。寒さが突き刺さるが悪くない。

忙しく過ごしたあと、上司に連れられて飲みに行く。

2週間前から誘われていたが、感染拡大が続くなか、無くなったと思い込んでいた。

どうやら上司はニュースとか見てないらしい。


お店に着くと他社の先輩もいた。三人ならギリセーフか。


お店はお客さんが僕らしかいない上に個室だったので少しは安心した。


街にもほとんど人がおらず、感染拡大が深刻であることをうかがわせる。

そんななか飲みに行くのも気が引けるが、上司は脳みそがアルコールで出来てるからそういう世の中の空気感は読めない。


仕方ない。付き合ってやるか。


一次会はビールはそこそこに焼酎に切り替えて完全に飲みすぎた。

二次会は他社の先輩の知り合いの店。


こちらもお客さんがおらず貸切。


飲食店はホントこの状況でやっていけるのかな?思いきってまん延防止等重点措置、通称まん防を宣言してもらって補償金をもらったほうがいいんじゃないかな?


なんて考えながら飲んでたらいつものように僕へのダメ出し大会が始まった。


いつも通り聞き流してたけどね。


しかも言われてることは、



「ごもっとも。」


と思わず唸るほどの正論だったんだけどね。



そんなこんなで二次会はお開き。



さて帰ろうと思ってたら他社の先輩が上司に




「次◯◯電話しときました。」



とまさかの三次会オファー出してた。





バカ野郎!一次会で終われたらいいねとか言ってただろこの裏切り者!



何でこの時勢に三次会いく必要があるんだ。そもそもみんな泥酔だろ!


おっさんが一人でやってるbarにおっさんが三人で行ってどうする!いつもとおんなじ話するだけだろ!



無事三次会へ到着。


無論客は我々だけだ。




話は相変わらず僕への説教だ。


全然慣れっこだからいいのだが、他社の先輩の上司への合いの手が気になる。





「ホントにその通りですよ」


「お前◯◯部長がいるからこの業界は円滑にいってるんだぞ。分かってるのか?」


「僕は◯◯部長が言ってることが100%正しいと思ってる」



等々、とんでもないよいしょっぷりだ。



この合いの手に気をよくした上司も



「俺がいるからこの会社はやっていけてるんだぞ?俺がこれまで積み上げてきたことがどんだけ大変なことだったか分かるか?」





結局いつもこの話になる。




まぁ慣れっこだからいいけどね。



でも少しムカついたから上司のタバコ勝手にとって吸ってやったけどね。



これで禁煙も1ヶ月ちょっとで途切れちまったよ。どうしてくれんねん。


こんなしょうもないことでタバコを吸ってしまった自分への嫌悪感に押し潰されそうになりながらもなんとか三次会は終了。



時刻は1時半。

18時からスタートしたから7時間半。



バカかよ。



さらに上司は呂律のまわってない状態で足下をふらつかせながら



「よっしゃ、ラーメンいくか」


とか言ってる。

先輩に脇を抱えられながら何を言うてんねん。


僕は


「ちょっともう飲み過ぎて気持ち悪いんで先に帰ります」


と言った。



すると上司は


「行った方がいいと俺は思うけどね。」



とよく分からないことを言ってきた。


隣の先輩も

「俺だったら行くけどね」


とよく分からないことを言ってきた。





とりあえず聞こえないふりして

「お先に失礼します」と大声で行って小走りで逃げてみる。



後ろではぶつぶつ何か言ってたが気にしない。



おそらく二人で僕のダメ出しをしながらラーメン食べるんだろう。

ていうか上司はこれまで頼んだラーメン完食してるの見たことないけどね!!二口くらい食べて終わるんだけどね。



いいのいいの。なに言われたって大丈夫!
無問題。



二人ともどうせ覚えてないから。


だから毎回同じ話するんだろうな。






帰り道にまだタバコ吸ってしまったことを悔やんでいた。


酒の味なんて一個も覚えてないし話してた内容も全部忘れてもいいけど、吸ってしまったことは忘れない。



僕は覚えてる。

いつか部下と飲みに行くときにも、僕は今日のことを覚えておこう。