むらよし農園

面白いことが書ければと。

『カミサマ』という職業の話

僕の住んでいた奄美大島に関する、ちょっぴりスピリチュアルな話。

長くなるかもだが、僕が体験したことなどを中心に書いてみたいと思う。

 

 

 

スピってる島

我が郷土である奄美大島は、琉球文化と薩摩文化が融合している。

そこに土着信仰や潜伏キリシタンの考えも入ってきており、まぁまぁカオスなスピリチュアルアイランドである。

 

かの有名な冝保愛子さんが、恐ろしさのあまり飛行機から降りられなかったという噂もある。(信じるか信じないかはあなた次第)

なので、不思議な伝承や怪談の類は山ほどある。

 

昨年公開の映画『忌怪島』の舞台になったのも記憶に新しい。

 

余談だが、あの映画に出てくる、物語の核となる怨霊の存在は、島の人は口に出すのをタブーとされているほどの存在なので、あの映画をよく思ってない島民も多い(笑)

 

そんなスピりまくってる島には、少し変わった職業がある。

 

『カミサマ』と呼ばれるものだ。

 

 

カミサマという職業

うちの島には、『カミサマ』と呼ばれる人々がいる。

 

「明日『カミサマ』のところに行くからね。」

 

「あの人のお母さんは『カミサマ』だから・・・」

 

このように日常の会話にも出てくる。僕も何度も聞いているし、会ったこともある。

 

決して『神様』ではない。

 

あくまでも『カミサマ』だという。

この辺のニュアンスはなかなか文章では上手く伝えきれないので、実際に3年くらい住んでもらえたら分かると思う。

 

では、このカミサマとは一体どんな人を指すのかというと、

 

この世ではない場所に連絡が取れる人のことを言う。

 

 

この辺のニュアンスも非常に難しく、神様とコンタクトをとる専門家ってことでもないし、死者とのコンタクト専門ってことでもない。

 

もちろん、そういう能力を持つカミサマもいる。

 

しかし、予知能力のうようなものを持つ人や、占い的な力を持つ人もいる。

 

つまり、常人とは違うスピリチュアルな力を持つ人を指して『カミサマ』という。

 

沖縄には『ユタ』や『ノロ』といったシャーマン的な職業が存在する。

そして、琉球文化を色濃く残す奄美大島にも『ユタ』『ノロ』と呼ばれる人は存在する。

 

これらの、いわゆるシャーマン的な人は現在も存在している。

 

ではカミサマとはなんなのか。

 

カミサマとは、ユタやノロよりももっと身近でライトな存在なのである。

 

 

『カミサマ』は副業?

ユタやノロといった特殊な人々は、基本それを専業にしている。(例外もある)

というよりも、神様に選ばれた人が修行してなるものなので、誰もが出来ることではないし、その選ばれた人は、その仕事をすること以外許されないくらいの認識だ。

 

一方でカミサマはどうか。

 

カミサマは本業でなく、副業として行っている人が多い。

 

僕のこれまで3人のカミサマと会ったことがあるが、それぞれ僧侶、整体師、美容師という本業を持っていた。

 

3人とも、幼い頃から人ではない『ナニカ』とコンタクトがとれていたそうだ。そしてみな信じられない程の怪談話や不思議な話を持っていた。

 

今回はその内の一人であるAさんの不思議な話を紹介したい。

 

 

カミサマの力

Aさんは、幼い頃から、人とあの世の人の区別がつかない程ハッキリとその存在が見えていたらしい。

普通に会話も出来ていたので、そのことから周りに気味悪く思われ、1人も友達が出来なかったそうだ。

そして中学を卒業した頃に、その力に気付いていた両親に連れられて和歌山のお寺に修行に入った。

 

そこで修行を積み、僧侶となって奄美に戻ってきた人である。

 

初めて会ったのは、母方の祖父が亡くなって1年が経った頃。

一周忌を終えて一段落しているところに、母の知り合いの紹介でこのAさんがやってきた。

 

「すごいカミサマがいるから連れて行くね」

 

母にはそんな風に紹介されていたらしい。

 

僕はその頃思春期真っただ中で、「何がカミサマよ。母や祖母が騙されないように見張っててやる」と意気込んでいた。

 

そして、実際にAさんに会った時も、100%疑いの目で見ていた。

 

Aさんは、僕ら親族の前に立って挨拶をした。

 

簡単な自己紹介のあとにこんなことを言った。

 

「実は昨日、おじいさんとお話をさせてもらい、皆さん宛の手紙を預かってきました。」

 

全員がポカンとしてた。

 

祖父はもちろんこの世にいない。1年前に亡くなっている。

そんな祖父から手紙を預かってるだと?

 

詐欺師すぎだろ。なんだこいつは。Aさんは話を続ける。

 

「おじいさんは、本当に皆さんのことを想ってるし、今も見守ってくれいていましたよ。」

 

なんだこいつは。

 

とんでもねぇペテン師が現れたぞ。

僕はそんな風に思っていた。

 

Aさんは、封筒から1枚の便箋を取り出して、おじいさんからの手紙を読み上げ始める。

 

なんだかそれらしいことを言ってるように聞こえる。

 

しかし、圧倒的な違和感があった。

 

手紙の中の一人称がワシだったのだ。

 

誰一人として、じいちゃんがそんな言い方をしているのは聞いたことない。

 

このペテン師野郎、年寄りだから一人称ワシにしとこうみたいな初歩的なミスしやがったぞ。

僕らはニヤニヤしながら手紙を聞いていた。

 

まぁこんなもんだよね。

 

『カミサマ』か何か知らんが、死者と話せるなんてそんなことあるわけないだろう。

 

そんな、こんなでAさんは手紙を読み終えた。

場は、カミサマのペテンを見抜いたことで、白けた雰囲気が漂っていた。

 

1人を除いては。

 

 

祖母が一人泣いている。

 

かわいそうに、ばあちゃんだけ騙されたのか。

 

そう思っていたが、ばあちゃんが小さい声で話し始めた。

 

「あの人は昔から大事なことは手紙で伝えようとする人だった。そして手紙では必ず『ワシ』って書いてたの。この手紙は間違いなくおじいちゃんからだ。」

 

祖母は、そう言ってまた泣きだした。

 

僕らは絶句していた。

 

 

本物だったカミサマの力

祖母の話を聞いて言葉を失った僕ら。

Aさんと祖母はもちろん初対面だ。

そして、祖父が大事なことは手紙で伝える人であったことや、手紙の中ではワシと書いていたことなど、祖母以外に誰も知らなかった。

 

この日を境に、Aさんとはたびたび会う仲となった。

 

何度も会って話をしてきて言えることは、Aさんの力はおそらく本物だということ。

 

じゃないと説明がつかないことが多すぎた。

このときの話に限らず、同じようにあの世の連絡先を知ってないとおかしいというような出来事がたくさんあったのである。

 

そして、この後に出会う美容師のBさんというカミサマも、とてもすごい力を持っていた。

 

つまり、世の中には常人には理解できない程の力を持ってる人が存在してるってこと。

 

少なくとも僕はそう信じている。

 

信じるか信じないかは、あなた次第です。

 

 

おわりに

カミサマという職業についての話を書きましたが、正直僕自身よく分かってません。

職業という風に書きましたが、どんな風にお金を稼いでるのかもちゃんとは分かりません。

ただ、何か困ったことがあったり、よくないことが続いているときなどは、カミサマに相談に行く人は多い。

 

僕も一度親に連れられて相談に行ったことがある。

 

そのときもなかなか怖いことがあったのだが、それはまたの機会に。

 

謎が多く、不思議なこの『カミサマ』という存在。

これからもちょくちょく書いていこうと思う。