前回の話はこれ↓↓
快適車内
香港のバスセンターを出発し、中国の南寧という都市を目指す。
途中、香港から中国本土に入るタイミングでイミグレ的なのがあるのでそこで乗り換えるっぽいことを言われていたので、それまでゆっくり寝ようと思っていた。
バスはとてもきれいで、日本の高速バスと遜色ない。これなら余裕だ。
時間となり、席数の半分も乗っていない状態で出発。
リクライニングも倒し放題だ。こんな快適な旅でいいんですか?
もっとこう、ボロボロのバスで、座る場所もないくらいにぎゅうぎゅうで乗ると思ってたのでとても安心した。
乗り換え地獄
走り出して30分が経過、その間に、追加の乗客が乗ってきていて、少し人数は増えたが、それでも快適そのもの。そろそろ寝るかと、ウトウトし始めたころ、またもバスが停車。
また誰か乗ってくるのかと思いきや、全員が降り始めた?
意味が分からずボケっとしていると、運転手に降りるよう言われた。
え?さすがにこんなには近くないぞ。
そう思っていると、運転手にアレに乗れと1台のバスを指さされた。
それは、最初のバスよりも二回りも小さくて、少し古いタイプのバスだった。
言われるがままに乗り込む。
さっきのような快適さはなく、ぎゅうぎゅうに詰め込まれたような状態での再出発となった。
意味が分からない。
まだ街中なのに乗り換える意味とは?
そこからイミグレまでの3時間ほどの間でさらに2回も乗り換えることになった。
なんだこれ。
そしてイミグレに到着し、ほとんど何にもチェックされずに無事に中国本土に突入。
さっきまでのバスは降りて、歩いてのイミグレなので、また次のバスに乗り込まないといけない。
しかし、なんのアナウンスもないし、あったとしても中国語なんて全く聞き取れない。
バスは10台以上停まっている。どれが正解かは分からない。
さてどうしようか。
ツーブロックのあいつ
僕とタッチーさんには、この乗り換え地獄を乗り切る秘策があった。
それは、香港出発時からずっと乗っているとある人物について行くというものである。
彼女は、年齢不詳の見た目で、短髪のツーブロック。
ど派手なマウンテンパーカを着こなし、デカいバックパックを持っている。
おそらく僕らと同じ旅人だ。
彼女はこれまでの乗り換えですべて一緒になってきた。きっと南寧までいくだろう。
そう思い、彼女が乗るバスに乗るという方法で乗り換えを乗り越えてきた。
今回も彼女にひたすらついて行く。
すると彼女は一台のバスに乗り込んだ。
周りの人もさっきまで乗ってた人だから大丈夫だ。
そして僕らも同じバスに乗り込んだ。
これでひとまずは安心だ。
サービスエリアの洗礼1
そのバスに乗って、30分ほどが経過した。
バスは動かない。
外を見ると、運転手が道路の縁石に腰かけ弁当食ってた。
ようやく動き出して2時間ほど走ったころ、バスはサービスエリアに到着する。
次の停車はいつになるのか一切分からないので、トイレには行っておくことに。
外はもうすっかり暗く、冬の気温だった。
とりあえずタバコに火をつける。
先輩にもらったクールマイルドはもう最後の一箱になっていた。
火を消してトイレへ。
トイレの入り口には年配の女性が座っている。
驚いたことに、トイレは有料だった。
見たところかなりボロいトイレなのにだ。
1元払えと言われたので、10元札を出す。
まだ買い物をしていなく、細かいものはなかった。
するとおばちゃんは、不思議なことを言う。
「おつりがないよ」
は?そんなわけないだろ。
みんな1元払って入っているのにそんなことある?
ていうかさっき大量に1元札入ってた箱隠したやん。
これは日本人などの、警戒心の薄い観光客がよく使われる手口である。
面倒なことを嫌う日本人は、大した金額じゃないのをいいことに、
「じゃあおつりはいいや」
と言ってしまう。
瞬時にその手の詐欺だとわかったぼくは、毅然と
「崩してくる」と言った。
おばちゃんは憎々しげな眼で僕を睨んでいた。
サービスエリアの洗礼2
小腹も空いてたし、なにか食べようかとサービスエリア内をうろつく。
日本のように、きれいな店舗ではなく、屋台が並ぶワイルドなスタイル。
そのうちの一軒の焼き鳥屋の前に行ってみる。
炭火で焼かれた串状の食べ物は美味しそうに見えたのだが、看板に書かれたとある漢字に目が止まる。
「猫」
読めない漢字に混じって猫と書いてある。
まさかとは思うが一応聞いてみる。
僕は焼かれた串を指さして、
「Cat???」
と聞いてみた。
すると店主が
「Cat!!!」
と笑顔で言った。
当然買わずに後にした。
サービスエリアの洗礼3
焼き鳥ならぬ焼猫を諦め、ミカンを買ってお金を崩した僕は改めてトイレへ。
あのおばちゃんに1元を差し出す。
おばちゃんは無言でかっさらっていった。
お金を払ってようやく入ったトイレは、一言で言うと
「最低最悪」
だった。
まず小便器はない。
ただ壁の下に溝があるのみ。
そして仕切りもない。
大昔の日本のトイレ。
大用の個室は、言葉にするのも躊躇われるほどの状態。
簡単に言うと、う○この上にう○こが積み重なった状態。
誰一人流さず、みんなが力を合わせて積み上げた結果、便器から溢れちゃった。という状態である。
当然ながら匂いも凄まじい。
僕はそのまま走って退散した。
自分の体がとても臭くなった気がして、外で急いでタバコを吸った。
サービスエリアにこんなトイレが存在してるとは。
そしてそんな国に自分はいるんか。
中国という国の手ごわさが少しずつ分かってきた・・・
つづく