ビワイチとは?
『ビワイチ』
知ってますか?
聞きなれない言葉かと。
ビワイチとは琵琶湖一周の略称であり、琵琶湖を一周するサイクリングルートの名称である。
2019年には、国土交通省が定める「ナショナルサイクルルート」に指定されている。
とある夏
僕と先輩と後輩の3人で自転車でのビワイチに挑んだ。
過酷ながらもエモーショナルな旅の記憶を呼び覚ましてみたい。
何かがしたい夏
2018年夏
高知商業高校の12年ぶりの甲子園出場に沸く高知。
ただただ暑い日が続く。
会社の長めの夏休みが始まり、毎日何かしたいけれど特にすることはないという日々を送っていた。
何かおもしろいことないかな~
30を目前にしながらこんなモラトリアムなこと考えてる自分がかわいかった。
そういえば上司は母校の高知商業を応援しに甲子園に行くと言っていたな。
連れてってもらおうか。
甲子園なんてめったにいけないし。
でもどうせ県外出身の僕なんてアウェーになるんだろうななどと考えていた。
そんなときY先輩から連絡が来た。
先輩も世界で一番暇だそうだ。
「何かするかい?」
「どうせ暇だし何かしましょう。」
何をするかは決めてないが、何かをすることは決まった。
今日中に考えておくから明日の夜作戦会議しようと言われ、了解した。
作戦会議しようなんて子どもに戻ったみたいでなんかいいな。
「とりあえず明日から5日間くらい空けといて」
その日の夜に届いたLINEで、何かをするの「何か」は県外に行くことになるんだなと分かった。
翌日、どこに行くかは分からないけど数日家を空けることになりそうなので洗濯と掃除と冷蔵庫の整理などして過ごしていた。
昼に中華を食べに行く。テレビでは高校球児が熱い戦いを繰り広げている。
こんな風に熱くなれる瞬間はもう来ないのかな。
そんな少し冷めた目でテレビを見ながら焼きめしをほおばる。
ガンガンに効いたエアコンが甲子園との距離を演出してくれる。
飲んじゃお。
瓶ビールを片手に最高にエモい夏が始まった。
夜の作戦会議まであと8時間。
18時ごろ先輩から電話。
「海山川だったら何が好き?」
「まぁ海ですかね?」
「了解。ほなまた連絡する。」
「ちょ、ちなみに山はなんです?」
「山だと富士山を海抜0メートルから登る旅やな。」
きっと頭がおかしいんだろう。
「絶対に嫌です。海でお願いします。」
ビワイチ決定
先輩から再び連絡が来たのは夜の10時をまわった時だった。
いつも通りにビールを片手に川原で作戦会議。
アラサー二人のすることではない。
「ビワイチって知ってるか?琵琶湖をチャリで一周するんやけど・・・」
「知らないし、したくないですね」
「もうチャリの手配も済んでるし行かない選択肢はないねん」
「・・・」
自転車で琵琶湖を一周することが決定した。
海みたいだけど海ではないやん。
「あっあと後輩のNも呼んでるから」
「3人ならなんとか楽しくいけるかな~」
「ちなみに後輩Nには甲子園観に行くって言って誘ってるから」
「ビワイチのことは?」
「向こうについてチャリに乗り出したら教えようかと思う。」
かなりむごいが世の中とはそういうものかも。
「『水曜どうでしょう』みたいですね」
「せやな、どうせならサイコロ持っていこう」
サイコロで何かしらを決める旅になりそうだ。
富士登山や、四万十川の源流地点から海までチャリで行くなどの、あたおか鶴太郎的プランと悩んだ結果ビワイチになったそうだ。その二つと比べるとビワイチがなんだかマシな気がしてきた。
自転車は京都に住んでいる先輩の同期にお願いしたという。
T先輩とする。
その人は僕も後輩もよく知っている人で、完全無欠の変人だ。
これまでに2度T先輩の手伝いでコミケに行っているが、T先輩の書いた同人誌がコミケの開催前のチェックを通るのが不思議でしょうがなかった。
このT先輩が自転車屋で働いていることもあり、自転車3台も貸してくれる運びとなった。
なんとなくだが琵琶湖一周が現実味を帯びてきた。
嫌だな~
後輩には最小限の荷物を、というか着替えくらいでいいぞとだけ連絡する。
すると、
「全然金ないっすけどいいすか?」
給料日前だしな
「みんな持ってないから心配するな」
それだけ伝えて電話を切る。
少々かわいそうだがこいつは何度もこのような状況を乗り越えてきてるから大丈夫だろう。
そういえば明日何時出発だっけ?
後輩Nにも伝えないと。
「先輩明日出発何時ですか?」
「5時の始発」
現在夜の12時を回ったところである。
過酷な旅になりそうだ。
つづく