やっと仕事納めを終え少しばかりの年末年始休業に入る。
今年は帰省もしないしどこかに旅行に行く予定もない。
とてものんびり過ごすことが出来そうだ。
仕事納めを終えて、何となく年始にやることをまとめていたときのこと。
明日から休みだということで、終業後もなんとなく残ってダラダラと喋っていた。
そんななか一人の女性社員が新しいネイルを買ったからと別の女性社員に塗ってあげていた。
しばしの休みに入るつかの間の楽しみなのかもしれない。
僕は微笑ましく見ていた。
「むらよしさんも塗りません?」
女性社員が話しかけてきた。
もちろんその場のノリというか冗談だろう。
なので僕も笑って断った。
でも、
「明日から休みだもんなー仕事もないし、仕事の人間と会うこともない。」
そんなことを思いながら眺めていると、ふと頭にある考えが浮かんできた。
そのまま、頭に浮かんだことを女性社員に向かって言ってみる。
「やっぱり塗ってくれない?」
自分でもなんでこんな気持ちになったのかは分からない。
もちろんこれまでにネイルなんかしたことはない。
でもなぜか塗ってみたくなったのだ。
女性社員は嬉々として僕にネイルを施してくれた。
ネイルってのはただ単に色のついた液体を塗るだけじゃないんだ。
何やら透明なものを塗ったり乾かしたり色々な工程を経て完成するという。
全てが初めてのことで新鮮だった。
なんとなく両手は恥ずかしく、とりあえず片手だけ塗ってもらいその日は解散となった。
そのまま飲み会に参加して酒を飲んでいると、多くの人に「爪どうしたんですか?」と聞かれる。
僕は自分でも何でそんなことしようと思ったかわかってなかったので、
「好奇心で」と答える。
みんな納得したような顔をしていた。
ちなみに爪のことを聞いてきたのは全て女性であり、おじさんは一人として気づくことはなかった。
確かに、おじさんに人の爪を見る習慣はない。
よくドラマや漫画である、女性が男性に「ねぇどこか変わったとこない?」と聞くシーンが思い出された。
そうか。
女性は身だしなみや服装、髪や爪やお肌に関して非常に気を使っている。だから人の変化に気付くし自分の変化を気付いてもらいたいのか。
自分の身だしなみにも気を使っていないおじさんが人の変化に気付けないのは当たり前なのだ。
いいか悪いかは置いといてそういうことなのかも。
納得である。
僕はその日から、ことあるごとに自分の爪を眺めた。
いつもと全然違う爪。
だが妙に目を向けてしまう。
これまでネイルをしたいという気持ちなど微塵もなかったし、爪をきれいに飾る女性のことなど1ミリも理解したことはなかった。
それが今はどうだ。
なぜか分からないが少し気持ちが上がっている自分がいる。
不思議だ。
昨日はスタバのドライブスルーで店員さんに「爪かわいいですね」と言われた。
恥ずかしい気持ちと嬉しい気持ちが混ざった変な感情になった。
もちろんこれからもネイルを続けていくつもりはない。
このネイルが落ちたらこれまでと変わらないナチュラルな爪に戻るわけだが、僕の中で何かが大きく変わった気はする。
若い頃さんざん言われた言葉。
「お前は本っっっっ当に女心が分からないやつだな」
実際にそうだったし分かるはずがないと思っていた。
そんな僕が・・・
女性の気持ちがほんの少しだけ分かった37歳の冬である。

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