人間という生き物は『変化』を恐れる生き物だという。
それが小さな変化であっても。
自分の日常やルーティンを変えることを好まず、同じことを繰り返しがちだ。
僕もそうだ。
そんな僕が勇気を出して日常に小さな変化を起こした話(レイトショー観ただけ)である。
今月は忙しい。
土日も仕事が入っていることが多いため、丸々休めるのは3日間しかない。
その忙しい10月の中でももっともタイトでタフな戦いを強いられたのが先週末だった。
その最も忙しいさなかに、あえてのチャレンジを敢行した。
絶対にすぐに休んだほうがいい。
体力を残したほうがいいことは百も承知。
それでもやると決めていた。
そう。
レイトショーで『国宝』を観るのだ。
『国宝』の説明は今さらする必要はないだろう。
これまで何度も話題となり、観た人みんなからおススメされてきた作品だ。
いつか観よう。
そう思っていた。
同じように『いつか観よう』と思いながら観れずじまいだった作品は数知れず。
今回こそは・・・
そう思っていた。
ではいつ観るのがいいだろう?
土日は映画館のあるイオンモールは人がいっぱいで行きたくない。
平日は仕事がある。
レイトショーは終了時刻が遅い。毎日22時過ぎに就寝する僕にはちょっと・・・
そんなことばかり考えていた。
しかしこの忙しいさなか、ふと思い立ったのだ。
「あえて今・・・か?一番しんどい今こそじゃないか?翌日も仕事のある日のレイトショーをあえてぶちかましてみる?」
そんなことを思ったのだ。
毎日毎日同じことを繰り返している自分に喝をいれたくなったんだ。
『金曜日のレイトショーで国宝を観る』
そう決意したのが水曜日。
この決意をしてから僕の心は少しだけ熱くなっていた。
大したことをするわけではないのにワクワクしていた。
普段寝ている時間にレイトショーを観に行く。
たったこれだけのことなのに。
金曜日。
仕事を終えて、夕食をすます。
僕は緊張していた。
これから僕は、普段なら寝ている時間に3時間も映画を観るのだ。
耐えられるだろうか?
寝てしまったりしないだろうか。
明日の仕事に支障は出ないだろうか。
そんなことを考えながら映画館へ向かう。
チケットを購入する。
後ろのほうの端に近い通路側。
幸いにも人は多くない。
中に入る。
予告がたくさん流れている。
そして真っ暗になり『国宝』は始まった。
一睡もすることなく、一切眠くなることなく3時間が過ぎた。
とんでもない映画だった。
ともに国宝を観たほかの観客たちとぞろぞろとスクリーンを後にする。
みな一様に声を潜めているようだ。
半分営業を終えているような暗いTOHOシネマズを出る。
暗く静かな駐車場。
ひんやりとした空気の中家路を急ぐ。
妙な充足感に包まれていた。
国宝自体もとてもいい映画ではあったのだが、そんなことよりも、このくそ忙しい時期にあえてレイトショーを観に行った自分に満足していた。
日常に変化をつけることが出来た自分に満足していた。
こんなことでもいいのか。
たったの1500円。
レイトショーの金額である。
これだけで僕は人生が動いたような気がしている。
これからの自分の人生に期待が持てた。
「なんだかイケそうなきがするーーー」
以上、37歳のおじさんがレイトショーを観ただけのことを大げさに綴った日記である。
