今週のお題「思い出の先生」
先日も書いた中学時代の担任の話である。
相当な破天荒な人なので、せっかくのお題に乗っかってもう少し書いておきたい。
コンプライアンスなんて言葉がまだ定着する前の時代の話である。
話半分、おおらかな気持ちで読んでもらえれば。
ファーストインプレッション
先生が僕の中学に赴任してきたときの年齢は50代半ばで、定年が見えてきたタイミングである。
結構有名な先生だったらしく、赴任してくる前から、この先生の噂で持ちきりだった。
いわく、
『ヤンキーの生徒をボコボコにしたらしい』
『金髪の女子生徒の髪の毛をみんなの前で切ったらしい』
『ヤ〇ザらしい』
などなど、尾ひれがついたにしてもつきすぎだろという噂ばかり。
これがホントなら教師なんて仕事できるわけないだろ。
そんな感じで、全ての噂を話半分で聞いていた。
そして赴任初日、体育館の壇上であいさつする先生を見て、
「あっ、噂は全部ホントなんだな」
と誰もが思った。
そのくらいの強烈なインパクトを受けた。
見た目の怖さもさることながら、その圧倒的な存在感は見る人全てを釘付けにした。
そしてその最初に受けたインパクトは、その後も薄まることはなく、事あるごとに強烈なインパクトを残し続けた。
その内のエピソードを二つ紹介しよう。
喫煙
まず一つ目に、喫煙がある。
この時代はまだ喫煙に関してはおおらかで、学校の敷地内で先生たちは喫煙していた。
僕の学校は田舎なので、先生たちは普通にグラウンドの隅とかでタバコを吸っていた。
しかしこの先生は違う。
授業しながら教室で普通にタバコを吸っていた。
数学の授業中、おもむろにポケットからタバコを取り出し、火をつける。
チョークを持っていない左手で優雅にタバコを吸う。
そのあまりに自然で滑らかな動きは、「あれ?先生授業中なのにタバコ吸ってる?」と気付くのを遅らせるほどの所作であった。
いくらおおらかな時代でもそんな人は後にも先にも見たことがない。
先生は技術室で授業をしていたのだが、技術室の教卓に置いてあるガラス製の鈍器のような灰皿はいつもパンパンであった。
タバコが切れると、僕らに車のカギを投げてきて、
「車からタバコとって来い」とパシってくることもあった。
僕の友達は学校近くの商店に買いに行かされたりもしていた。
飲酒
先生はお酒が大好きで、基本的に二日酔いであり、毎日と言っていいほど酒の匂いをプンプンにして学校に来ていた。
僕は社会人になってから、職場であれほど酒臭い人に会ったことはない。(自分が酒臭かったことはある)
でもそれだけならまだいい。(よくはない)
先生はある日、授業中いつものように僕らに問題を解かせている間、座ってタバコを吸っていた。
そして僕に、
「むらよし、このコップに水を入れてこい・・・半分でいいから」
と言ってきた。
自分で入れろよと思ったが、とりあえずコップを受け取って水道から水を注ぐ。
言われたように半分だけ注いだコップを先生に渡す。
「よっしゃ」
先生はそう一言だけ言ってコップを受け取った。
いや、ありがとうやろ。よっしゃってなんやねん。と思っていると先生のほうから
『トクトクトクトクトクっ・・・』
と何かを注ぐ音がする。
なんかと思って顔をあげると、
教卓の上の本棚の隙間から、紙パックの焼酎が傾けられるのが見えた。
呆気にとられてその様子を見ていると、先生もそれに気付き、
『ニヤッ』と不気味な笑顔を向けてきた。
いやなにわろてんねん。
しかし、そんなこと言えるわけもなく、何も見なかったことにした。
この日を境にたびたび同じような場面を見ることになる。
特別なことではなく、日常茶飯事のことだった。
終わりに
先生に関するエピソードはこんなものではない。
全然序の口に過ぎない。
書いていいか分からないものも含めたら、普通に一冊の本が出来ると思う。
昔あった『伝説の教師』なんてドラマも、こんなもんどこが伝説やねんと思うほど、僕たちの先生の破天荒さは群を抜いていた。
(まぁ『伝説の教師』のキャストも、今思うとある意味伝説だが・・・)
しかし、僕らはこの先生のこと好きだった。(女子は死ぬほど嫌っていた)
色々使いっパシリにされたり、理不尽なことを言ってくることはあったが、不思議と嫌いになることはなかった。
人間的な魅力に溢れた人だったんだ。
仲良くなると普通に僕らが先生をいじったりすることもあったし、いい関係だったと思う。
この先生のエピソードはまだまだ山ほどあるので、聞きたいという人は是非コメントなりブックマークで言ってください。
書籍化目指すので。
小さな島にいた破天荒な先生
信じるか信じないかはあなた次第です。