いつもの時間に目を覚ます。
ベッドから出て歯を磨く。
カーテンを開けて朝の光を全身に・・・
おや?
いつもなら完全に陽が差し込んでいる時間なのにまだ薄暗い。
太陽も寝坊したりするんか?
窓を開ける。
涼しい風が吹いている。
夏のやつサボってんな。
そう思い朝の支度を始める。
朝食を作り弁当を拵えたら準備完了。
いつもの時間に家を出る。
今日も快晴だ。
暑い一日になりそ・・・あれ?
暑・・・くない。
なんなら少し涼しいかもしれない。
え?もしかして夏のやつ・・・イヤ、認めない。
あたしゃ認めないよ。
まだまだ夏なはず。絶対にまだ夏なんだ。
昼時になり会社から外に出る。
カンカンの日差しと蒸せるような熱気。
なんだなんだ。まだまだ夏じゃないか。
ホッと胸をなでおろす。
翌日
夜中に目覚める。エアコンはタイマーによって切れている。
これまでなら寝苦しくてエアコンをつけ直すこともしばしば。
だが、今日はそんな必要はなかった。
そのまま眠りに再突入。
いつもの時間に目が覚める。案の定朝日は差し込んでこない。
また寝坊か。
全く夏のやつはだらしないぜ。
窓を開ける。
ヒヤっ
確実に涼しい空気が入り込んでくる。
僕は無言で窓を閉めた。
『トゥーン トゥーン トゥーン♪・・・』
脳内にあの曲のイントロが流れ始める。
イヤイヤイヤ
首を振って気合でイントロをかき消す。
まだ夏。
それは譲らない。
夏をやり切れてない。
僕が夏と言い切るうちは夏だから。
準備して会社へ向かう。
いつもの高架下の道を自転車で駆けていく。
いつもと同じ時間なのに涼しい。
よく道を見ると、道が完全に陰になっている。
これまではこの時間ならもうほぼほぼ日が当たってたはずなのに。
『 真夏のーピークがー去ったー ♪・・・』
あの曲の歌いだしが脳内に響き始める。
かき消すように自転車を猛然と漕ぐ。
しばらくして体が汗ばむのと同時に、脳内に流れる曲は止まっていた。
無理やり夏っぽい曲を脳内で検索する。
『 夏 エモい曲 』
ヒットしたのはこんな曲
僕の脳内グーグルはなかなか優秀じゃないか。
これから夏が始まるんじゃないかという期待すら抱かせる名曲に聞き惚れながら、僕はまだ夏を諦めない。
どんだけ涼しくなろうが、秋が主張しようが、大声で
『まだです!!』
と、朧のように叫ぶだろう。
そのくらい諦めたくないのだ。
話は変わるが昨日、僕はひとつ歳を重ねてしまった。
この歳になってうれしいも何もない。むしろ寂しさがこみ上げてくるまである。
仕事終わりにCoCo壱に行く。
節約と節制のために外食を控えていたが、今日くらいいいじゃないか。
食べたかった期間限定の『カシミールカレー』を注文。
カキフライ(2個)もつけちゃえ。
シャープな辛みとキレのあるスパイスが効いてて美味しかった。
じんわりと汗ばんだ体で店を出る。
店を出ると、もう言い訳出来ない程の涼しい風が僕の体を冷ましていく。
車に乗り込んでエンジンをかけると、車のスピーカーからこの曲が流れてくる。
今年の夏は一度も聞かなかった。
大好きだけどあえて流さなかった。
夏を終わりたくなかったからだ。
でも今日はもういい。
夏の前半が終わったということにしよう(往生際が悪い)
さてと。
僕もまだ36歳。
何かを諦めるにはまだまだ早いな。
頑張らねば。