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不穏な誘い
コロナも治り、久しぶりに職場へ向かう。
同僚たちからは、「大変だったね」、「もう大丈夫なの?」「無理せんでもいいから、しんどくなったら休みや」などの優しい言葉をかけてもらった。
一方の部長は、依然として無視を続けている。
コロナ明けの部下に一言もない。
まぁ別にいいんだけど。
仕事に復帰して3日目、唐突に部長に話しかけられる。
「来週の火曜に飲み会あるから空けておけよ」
どうやら同業さん達との新年会のような飲み会である。
多くの同業者との飲み会なら無下には断れない。
行きたくはなかったが、渋々「行きます」と絞り出す。
部長はそれ以上何を言うでもなく立ち去っていった。
なにやら不穏な空気を感じたが、気にしないことにした。
スタート時間
部長が会社に全然いなかったので、飲み会の前日にやっと飲み会の詳細を聞けた。
場所はいつもと同じ古い居酒屋で、時間は20時スタートである。
20時スタートは遅すぎんか?
聞くと、二つの会社が遠方への出張があったそうで、そこに合わせたらそんな時間になったとのこと。
終わりは22時か。
しんどいな。
まさか2次会なんてないよな?
いやあの部長のことだ、ないことはないだろう。
年末の飲み会の話をされるのだろうか。いやさすがに周りにもたくさん人がいるしな。
それに、僕はなんといってもコロナ明けだ。2次会はどうにかして逃げ切ろう。
飲み会
飲み会当日、部長は昼前には帰っていた。
僕はシンプルに20時まで残業していたので、そのまま飲み会へ。
色んな会社の知った顔15人ほどが参加してた。
部長はもう酔っており、早い時間から飲んでたんだろうなと思われる。
部長から一番遠い席に腰を下ろす。
飲み会が始まってしばらくは他社の営業さん達と楽しく飲むことが出来た。
同じ業種なため、みんな同じようなことで苦労している。
そんな話をすることが出来ただけでも来た甲斐はあったな。
そんなことを思っていると、部長が僕を呼んだ。
視線を向けると、一番上座に座り、他社の部長さんと並んで難しい顔をしてる部長が見えた。
ついに始まる
グラスを持って隣に腰かける。
最初は、仕事の話をしていたが、20分もしないうちにこう言われた。
「お前、年末の飲み会でどうして俺を誘わんかったん?」
とうとう来たか。
僕はずっと考えていた言い訳をぶつける。
要約すると
・直前に決まったので声をかけるタイミングが難しかったこと
・幹事である後輩は悪くないこと
・僕が、仕事に追われ過ぎて声をかけれなかったこと
・体調のことを勝手に慮ってしまったこと
以上のようなことを話した。
ついでにちょっとだけ社長のせいにした。
部長は、一切こっちの顔を見ずに渋い顔をしている。
すると、部長の隣に座っていた他社の部長さん(Bさん)が口を開いた。
「むらよしお前な、さすがにひどいぞ。疲れてたとか、そんなん言い訳にならんぞ。」
どうやら、Bさんは飲み会の前に部長と飲んでいたらしく、事の顛末を聞かされていたようだった。
一次会の残りの一時間、僕は延々とその二人から説教を受けることになる。
僕はひたすらに謝り続ける。
部長は言う。
「この会社の飲み会をこれまで段取りしてきたのは誰だと思ってるんだ?そんな人を呼ばないなんてことある?」
「なんや、若手が仕事忙しいふりしてちょこちょこやってるけど、お前らの仕事なんて大したことはしてないんだから、そんなやつらが調子にのるな!」
おぉ~なかなかの怒りである。
「もう俺は、会社の飲み会には金輪際行かないからな。社長が幹事のときには仕方ないから行くけど、それ以外の飲み会には絶対に行かない。」
おや?ご褒美かな?
願ったり叶ったりなんだが。
そんな感じでひたすらに怒られ、一次会は終わった。
まさかの時間
一次会が終わり、僕はこそっと集団を遠巻きに見ていた。
案の定部長が2次会に行く段取りをしている。
まわりも、断るに断れず渋々行くという返事をしている。
もう22時を回っている。
平日の火曜日にそんなに遅くまで飲みたい人はいない。
絶対に帰ろう。
そう思っていたが、部長の舎弟のような他社の先輩に捕まり、無事に2次会に連行されてしまった。
まぁ知ってたけどね。
そして、そこからはもう思い出したくもないのだが、結局3次会まで連れまわされて、解散は3時となった。
解散までの時間、僕はひたすら部長の横で延々と説教をされていただけである。
そのほとんどは、飲み会に誘わなかったことよりも、誰がこの会社をここまでしたと思ってるんだという話と、昔は本当に大変だったし、お前ら若手の何倍も働いてたし、何倍も酒を飲んでいたというもの。
高い金を払い、常識外の時間まで付き合うことを強要され、聞く話は説教のみ。
なかなかの授業だぜ。
僕は部長を飲み会に誘わなかったことを後悔していた。
こんなダルいことになるのなら・・・
しかしそれと同時に、やはり呼ばなくて正解だと思った。
こんな飲み方する人があの場にいなくてよかったと。
やはり僕はブルースウィルスだったんだと。みんなを守ったんだと。
そう思わないとやってられなかった。
翌日、めちゃめちゃしんどかったが、なんとか朝早くから出勤し、無事に1日を終えた。
部長は朝から休んでいた。
つづく