今週のお題「好きな街」
ドがつくほどの田舎に生まれ育ち、18歳から全国人口数ワースト3位の高知へと移り住んで今に至る。
だからなのか僕のなかには常に都会への憧れがあった。
『アド街』『モヤモヤさまぁ~ず』『孤独のグルメ』など、東京をブラブラして美味しいものを食べるような番組を見ているだけでワクワクしたものだ。
僕の兄が東京に住んでいたこともあり、大学時代は長期の休みになると兄の家に遊びに行っていた。
毎回2週間ほど泊まり込み、東京生活を満喫しようって寸法。
様々な番組で出てきたお店のなかから、自分の財力でも行けるお店をピックアップして自分なりのガイドブックなんかを作っていた。
大学の図書館にこもってネットを駆使してお店をリストアップする作業は楽しかった。
渋谷、新宿、原宿、下北沢、吉祥寺・・・
都内各所に散らばる名店をどのように回るかを考えるのも楽しかった。
しかし一つだけ大きな問題がある。
兄の家があったのは東京23区から大きく外れた多摩市だった。
これが兄の住む家の最寄り駅。
サンリオピューロランドがあることで有名なあの駅だ。
都心からの距離は千葉や横浜レベル。
僕は東京の広さを舐めていた。
新宿や渋谷に出るだけで往復1000円もかかる。
さらにほかの場所に行ったりしていると、交通費だけでお金がかかりすぎる。
そうなるとどうなるか。
そう家からほとんど出なくなる。
東京について数日はいろんなところに繰り出すが、3日ほどで疲れ果てる。
お金も秒速で減り続ける。
東京は、いるだけでお金がかかるとんでもない場所なんだ。
あんなに調べ上げた美味しい店もほとんど行けないまま、兄の家の近所の中華料理屋に通い詰めた。
だが、この中華料理屋が非常にいいお店だった。
いわゆる町中華的な店だが、何を食べても美味しかったし、リーズナブル。
おかみさんがよく喋る明るい方で、厨房で鍋をふるうご主人はニコニコと穏やかな方だった。
これは美味しいお店あるあるではないだろうか。
僕はホントに毎日この店に行き、酸辣湯麺を食べ、熱々の春巻きを頬張りながらおかみさんと瓶ビールを飲んだ。
僕が今でも酸辣湯麺が好きなのはこのお店のおかげだろう。
兄が常連だったこともあり、お店の方もとてもよくしてくれた。
そのうちほかの常連さん達とも仲良くなり、お店で食べた後みんなで近くのスーパー銭湯に行ったりもした。
気がつくと僕はこの町が好きになっていた。
死にたいにくらいに憧れた、花の都大東京。
思ってた東京暮らしは体験出来てないけど、長期の休みに多摩市で過ごす日々は楽しかった。
結局、どんな街に住みたいかっていうのは、近くにどんな店があるのかに尽きるんじゃないかな。
美味しくて安くて居心地よくて、そんな店があるだけで住みたくなるんだな。
幸いなことに今は美味しいお気に入りの店が近くにたくさんある。
次に引越しをするときも、近くにどんな店があるかを一番真剣に考えるだろう。
「こんな店が近所にあったらいいな」
これは飲食店を褒めるうえで最大級の賛辞じゃないかな?
そんな店をたくさん見つけたいし、たくさん紹介していきたい。