今週のお題にあるように、大人だってずっと勉強だ。
今週のお題「試験の思い出」
今日もいい勉強の機会を得ることが出来た。ある意味では試験を受けたのかもしれない。
仕事で外回りを終えた中途半端な15時。
戻ってもいいが戻らなくてもいいっちゃいい。
そこで、もう会社に戻らない旨を告げてサウナに行くことに。
実を言うと、こうなると思ってサウナセットを持って来ていた。
いや、もっと言うと、こうするために持って来ていた。
場所は先日も行った『高砂湯』。
前回行ったのは朝の開店直後だったので、そんなに多くのお客さんはいなかったが、今日は多かった。
こんな時間なのに、10人以上いた。僕みたいな高砂湯素人には分からないだけで、ゴールデンタイムなのかもしれない。
ガラガラっと開けて、まずは体をシャワーで流していこう。
そう思い、壁沿いに並ぶシャワーに座ろうとするが、少し違和感がある。
壁沿いに、10席シャワーが並んでいる。仕切りはないし、椅子はベンチタイプで繋がっているので、他のスーパー銭湯や温泉にはないアナーキーさがある。
4人のお客さんがシャワーを使用していた。
違和感を感じたのは、右側の方に4人が固まって座っていることだ。
オーセンティックな和柄が施された背中が並ぶ。
一見窮屈そうにも見えるなか、4人のおじさんが体を洗ったり頭を洗ったりしている。
おかしいなとは思ったが、仲良し4人組なのかなと思い、僕は4人とは距離を開けて左側の端に座る。
シャワーを出し、体を流す。
非常にぬるいがそういうもんだろう。
すると、右の方からバカでかい痰が流れてきた。
おいおい。
ハローもグッバイもサンキューも言わなくなったこの時代にずいぶんなご挨拶じゃないか。
右側を見ると、4人の中で一番左にいる、口から糸を引く歯の抜けたおじいさんが僕を凝視してニコニコしていた。
その口元の糸から、痰の正体がそのおじいさんであることは確定。
しかし、その目にはハッキリと
「メンゴメンゴ」
と書いてあった。
分かった。
建物の構造上、シャワーを使った人々の水は全て左側に流れるようになっている。
シャンプーやらボディソープやらヨダレやら痰やら・・・
だからみんな右側を使用していたのだ。
そんななか、みんなより左側にいるおじいさんはつい油断して痰を吐いてしまった。
そこにノコノコと僕のようなネイティブじゃない人間が来てしまったものだから、おじいさんも罪悪感からニコニコしてしまったんだろう。
僕もニコっと笑い返し、シャワーを離れる。
入念にかけ湯をしてからサウナへ。
サウナ内には5人ほどが入っていた。
コの字型に座るようになっているここのサウナ。
ここでも片方に人が固まっており、僕は必然反対側に座る。
僕が入ったことで雰囲気が少し変わった気がした。
見知らぬ人間に対する警戒のようにも感じる。
会話などはないが、なんとなくの雰囲気で赤の人がボス的な存在だということが分かる。
そして黄色の方がその次っぽい。
ちなみにロウリュ(熱源に水をぶっかけて蒸気を発生させてサウナ内の体感温度を上げること)をすることが許されているのはこの黄色のポジションだけっぽい。
その後、一人のおじさんが入ってきた。
入ってきて開口一番
「どうも、失礼します。」
そういって僕の隣に腰を下ろす。
そうか、僕にはこの挨拶が足りなかったのか。
次からは気をつけよう。
そう思いながら汗を流していると、ボス的な人がおもむろに
「いかんにゃーこのチャンネルは通販ばっかりやりゆう。そろそろ変えんといかん」
とつぶやいた。
すると隣のおじさん(推定50歳)が
「はい」
と言って小走りに外へ駆け出し、テレビのリモコンを持って来てチャンネルを変えて、また外に置きに行き、また戻ってきた。
その顔にはなんの曇りもなく、高校1年生のようなフレッシュさがあった。
なんという縦社会。
こんなにもすれ違ってそれぞれ歩いていくしかない時代において、
このようなびっちりと濃厚な縦のつながりが存在していることに驚いた。
そして、今僕とおじさんが座っているこの場所は、一見さんや下っ端の人の座る場所なのかも。
前回も僕は同じところに座った。
つまりは末席。
ちなみに歯抜けのおじいさんも後に僕の隣に座ってきた。
ほほう。
いいじゃないの。
これからもガンガン通うであろうこのサウナで、僕はどれくらいランキングをあげることが出来るだろうか。
目標はロウリュするポジションだな。
キンキンに冷えた水風呂に浸かりながらワクワクしている自分がいる。
やはりここのサウナは他よりも発汗量が段違いだし、水風呂の爽快感もすごい。
通いつめなくちゃという焦りにも似た強い気持ちが芽生えている。
「郷に入っては郷に従え」という言葉がある。
この高砂湯という郷に一日でも早く入り込めるようにしよう。
まずは挨拶だな。
次回来るときは扉を開けて元気よく。
「失礼します。こんにちは」
これでいこう。