今日は朝から仕事に向かう人たちを尻目にバチバチに決めたゴルフウェアで颯爽と出かける。
どうせならハイパー遊び上手な装いでいきたいからね。
街中より体感3度は低い山の上。
ピンと張りつめた空気はゴルフ場に来たという気持ちを盛り上げる。
スコアはまぁなんだ。いいじゃないか。
楽しかったんだから。
ちきしょう。
ゴルフ終わりに友人からLINEが届いていた。
そこには僕の大好きな漫画である『BAR レモンハート』の作者、古谷三敏さんが亡くなったというニュースが貼り付けられていた。
以前のブログでも書いたが、僕の大学生活に大きな大きな影響を与え、今なお影響を受け続けている漫画だ。
マスター、松ちゃん、メガネさんの3人と個性溢れるお客さんたちが繰り広げるほんわかストーリー。
時にハートフルに、時にポップに、時にセンチに。
そして毎話登場するお酒の数々。
ほとんど聞いたことのないお酒も多く、作者の造詣の深さに感心せずにはいられない。
出会いは大学3年生。
僕は寮に住んでいたので常に誰かが部屋にいるという状態で生活していた。
溜まり場のような部屋で男子学生が毎日ダラダラと過ごしていた。
そんなある日、友人が酔っ払ってこの漫画を買ってきた。
単行本ではなく、様々な話をオムニバス的にまとめたコンビニ本だ。
何とも言えない絵柄と、僕らが読んできた漫画ではあり得ないようなコマ割。
誰もが一目見てそっぽを向いた。
しかし、毎日毎日やることもなくゴロゴロしてるうちに暇潰しに読むやつがあらわれる。
そして一冊、また一冊とBARレモンハートのコンビニ本は増えていった。
部屋に10冊以上並ぶ頃にはみんなどハマりしていた。
おもしろい。
酒についての知識や蘊蓄、酒飲みとしての正しい心構えを教えながらも、キャッチ―で独特な世界観が新鮮だった。
ページ全体に哀愁が漂うようなそんな何とも言えない世界にどっぷり浸かっていく。
何度も何度も読み返した。
レモンハートのセリフだけで会話できるくらい。
大学生になりいっちょ前に酒を飲み、いっちょ前に失敗もして、それなりの酒飲みになっていると思い込んでいた僕たち。
それまで飲んだこともなかったウィスキーを何種類も買いあさっては、毎晩ああでもないこうでもないと、覚えたての知識で語り合った。
みんな同じ本で知識を得てるのにね。
当時酒を覚えたての僕らにとって、スコッチなんて美味しいわけもなかったのに。
「僕はボウモアが好きだな」
「やっぱりグレンフィディックじゃない?」
などと素人丸出し、半可通もここに極まれりといった状態であったが、大人の仲間入りをしたような気になれてうれしかった。
マスターには酒の素晴らしさを。
松ちゃんにはおじさんの哀愁を。
メガネさんには酒飲みにかっこよさを。
そしてバーボン小僧には半可通のかっこ悪さを教えてもらった。
あの8畳の部屋に男4人で無言で読んでいた。BGM代わりに酒場放浪記を流しながら。
あの時間は間違いなく僕の青春の1ページである。
もう二度とあの時間は過ごすことはできないけど、レモンハートに教えてもらったことは忘れない。
もう一度単行本で全巻集めてみようかな。
あぁいつか行ってみたかったな。
でもいつでも心の中にある。
ページをひらけばいつでも店に行ける。
ご冥福をお祈りします。
古谷さんは『しゃーわせ』だったかな。