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【ビワイチ その5 】極楽湯の罠とサイコロ発動

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極楽湯という極楽

 

夜通し漕ぎ続けようやく彦根にたどり着いた。

 

疲れているが達成感のような満足感のようなものに支配され気分は悪くない。

 

しかし体は汚いので

朝6時オープンの極楽湯へ向かう。

 

オープン前に数人が並んでた。パチンコ屋かよ。

 

汚い3人も列に加わる。

 

極楽湯は広くてきれいでまさに極楽だった。

疲れた体に染み込むようなお湯の気持ちよさに過酷な旅の途中であることを忘れそうになる。

 

あがって脱衣所で着替えているときのこと。

 

なにやら様子がおかしい。

後輩が係員に何か言われている。

 

「こちらの張り紙にもありますので以後気をつけてください」

 

 

どうやら後輩がお風呂場で服を洗っていたのがバレて怒られていたようだ。

 

なにしてんねん。と思ったけどよく考えたら

あいつは僕らに騙されて付いてきているから着替えなんて持ってきていなかった。

 

だからこっそり服を手洗いしていたのだろう。そのあまりの健気さと不憫さに胸を打たれたが、仲間だと思われたくなかったからずっと知らんふりしていた。

 

ごめんよ。

 

実は僕も先輩もこっそりTシャツ洗ってたんだよ。

 

同じこと考えてたんだね。

 

 

食事処で朝ごはんを食べた後、休憩所があるということで少し休んでから出発することにした。

 

かなり広い畳張りの部屋は清潔なうえにエアコンも効いていて快適そのものだった。

しかも座布団やブランケットもある。

さらに漫画喫茶のように大量の漫画まで備えていた。

 

各々が読みたい漫画を数冊持ってきてごろんと横になる。

 

座布団を折り曲げて枕にする。

 

気が付くと三人とも一冊も読むことなく熟睡していた。

 

 

身体の異変

 

目覚めると時計は12時を指していた。

 

しっかり寝たな。二人もなんとなく同じタイミングで起きてきた。

 

ここで三人とも異変に気付く

 

めっちゃ体が重い。

 

昨日から今朝までの活動は僕らのキャパを超えていたようだ。

それが仮眠をとったことで一気に爆発したのだろう。

 

休むことで体のだるさが放出されるとはなんという罠。

僕らは起きたそのままの姿勢で1時間じっとしていた。

 

 

ようやく先輩が

「そろそろ行くか」

とポツリ呟く。

聞こえないふりをしてまんじりともしない僕と後輩。

 

10分粘ったが諦めて出発の準備をした。

 

極楽湯を出て自転車に向かう。

僕らは自転車に洗濯した服を干してたのでそれに着替える。

 

駐輪場で自転車に干してる服に着替えてる様はなんと滑稽か。

 

パリパリに乾いたTシャツの着心地は悪くなかった。

 

 

サイコロ発動

 

とりあえず無言で彦根駅に向かう。

 

なぜ無言かというと、この先進むのか戻るのか決めかねていたからだ。

 

とりあえず彦根駅に向かい、そこで今回初となるサイコロを振ることになった。

 

 

彦根駅は割とこじんまりとしていて人通りも少なかった。

 

やけに立派な銅像が立っている。

 

井伊直政

 

何をした人かは分からないけどやたらとかっこよかった。

 

よし、この人の前でサイコロを振ろう。

 

この時点で僕と後輩の考えは戻る1択。

先輩はここまで来たら進みたいが戻るのもやぶさかではないといった様子。

 

サイコロのルールはこんな感じ

 

・各々が1~6まで今後のやりたいことを書く。

・1度目のサイコロを振る

・出た目が1ならそれぞれが書いた1の目の案をピックアップ

・2回目のサイコロを振る

・出た目が1,2なら先輩の案を採用

・出た目が3,4なら僕の案を採用

・出た目が5,6なら後輩の案を採用

 

といった感じ。

 

僕と後輩は1~6まで全て、戻るかステイするかの2択にした。全部戻るだと少しかっこ悪い気がしたから。

 

先輩は1~3まで進む。4~6までステイするといった感じ。

 

この時点で『進む』という目が出る確率は6分の1である。

これは勝ったと確信した。

 

だってパチンコで17%で大当たりって言われても当たるはずないし。

 

そんな薄いとこ引くわけないと思ってた。

 

 

井伊直政が見守る中、1度目のサイコロ

 

 

 

『3』が出る。

 

先輩の3・・・このまま進み琵琶湖一周

僕の3・・・彦根のパチンコ屋の調査して彦根に一泊

後輩の3・・・大津に向けて、来た道を戻る。

 

ここまで来てパチンコを選択肢に入れるあたり、もう正気は失っていたのだろう。

 

 

進むとステイと戻るにきれいに分かれたな。

 

 

 

しかし、進むが生き残っている。

 

ヤバい。

2回目のサイコロを振る。

 

1,2以外なら我々(僕と後輩)の勝利。頼む。

 

 

 

 

 

『1』

 

 

 

 

「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「帰してーーーーーーー!!!」

 

 

 

という大絶叫が彦根駅にこだまする。

 

 

 

その場に横たわる僕と後輩。

 

 

しばしの静寂の後

 

 

先輩の

 

「ほな飯いこか」

 

 

の声に無言で立ち上がり自転車にまたがった。

 

 

つづく

 

 

 

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